EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その42
眼を開けていられないほどの光の奔流が、俺達に襲いかかる!
こ、これは一種の通過儀礼なのかも……。
どこぞの誰かさんが展開する〝この世界〟の上に無理矢理なかたちで上書きされた〝別世界〟――固有結界の中へと入り込むための!
『ようこそ、我が固有結界へ――。』
「――ッ‼」
ムムム、そんな声が今、聞こえた気がする……空耳じゃないよな?
「お姉様、起きてください! むう、こうなったら、私の接吻で――。」
「わああ、フィンネア! ぐあっ!」
「あうあう、お姉様の頭は石頭です……あ、声をかけても起きないので、私の接吻で目覚めさせようと思ったんです~☆」
「お、おい、そりゃ、某おとぎ話の……うお、ここはどこだ!」
むう、俺はしばらくの間、気を失っていたっぽいな。
で、声をかけても起きないからってフィンネアの奴、接吻をだなんて……と、それはどうでもいい話!
俺の目の前に奇妙な光景が広がっている。
オマケに甘い匂いも……お、お菓子⁉
「わあ、この木の幹はビスケットですね。」
「樹液はオレンジ味のぜリーですよ、お姉様。」
「足許には草は飴みたいですね。」
「この花はマシュマロですなぁ!」
「このキノコはチョコレートだガウ!
「おお、コイツはクッキーの花か? おお、美味いぞ、皆も食べてみるのじゃ!」
「こっちにグレープジュースの水溜まりがあるわよ!」
「お、お前ら、迂闊に食べるなって……あ、あれ、一緒にいるのは、フィンネア、メリッサ、ミネル、アシュトン、ピルケだけ?」
固有結界とやらは、展開しているモノの心象風景が反映されるって聞いたことがあるぞ。
さて、この固有結界を展開しているモノは、甘いモノが大好きで仕方がない奴なんだろうか?
故に、そんな心象風景が反映した固有結界は、甘いお菓子の世界というかたちで彩られているワケかな?
と、それはともかく、俺と一緒にいるのはフィンネア、メリッサ、ミネル、アシュトン、ピルケ、サキ、アフロデューテだけである。
むう、他の仲間達は一体、どこへ……。
うーむ、単にはぐれだけならいいんだが……。
「なあ、ここから出るとしたら、〝主〟を見つけ出して倒すしかないのかな?」
「倒す倒さないはともかく、主を見つけ出す必要はあるわね。」
「う、うん、そうだよなぁ、まずは主を……ぶぎゃっ! ふえええ、生クリームの塊が顔面にィ! ブ、ブヘ、ゴヘ、ギャブッ! だ、誰だよ、生クリームの塊が連続で飛んでくる!」
なんだかんだと、この甘いお菓子で彩られた固有結界から出ることを考えよう。
で、その場合は主を見つけ出さなくちゃいけない……う、そう思った矢先である。
どこからか飛んできた生クリームの塊が、ビチャッと俺の顔面に直撃する……ふえええ、次から次に生クリームの塊が、俺を標的にするかたちで連続で飛んでくるじゃないか!
「ぐ、ぐえええ、生クリーム……あ、侮れないぜ、ガクッ!」
「ああ、お姉様が生クリームの塊の前に再起不能に!」
「うう、俺はまだ再起不能じゃないぞ……。」
「ああ、良かった~☆ でも、誰がお姉様に生クリームの塊なんかを!」
く、一体、誰が生クリームの塊なんかを……。
「あ、今度は足音が聞こえます、足音が!」
むう、このお菓子だらけの――いや、お菓子そのモノである固有結界の主、自らやって来たのか⁉
それとも行方不明になっている仲間の誰か……とにかく、誰かやって来たぞ。




