EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その38
「はわわわ、一体、この奥に何が冬眠状態で〝いた〟んですか!」
「カサカサという音が聞こえてきたぞ! こ、この音は蛇が地面を擦りながら進むような音だ!」
「チッ……何が奥に潜んでいたのかはともかく、奥は暗くて見えん! 懐中電灯で照らしてみるか――。」
「あ、キョウ様、それは聖地アンザスで見つけた……あ、あれぇ? 持ち出し禁止なのでは?」
「いんだよ、バレなきゃ! じゃあ、照らしてみっか……。」
「私もこっそり持ってきているよ、えいっ!」
ポース山の女帝の使い――モイライという名の巫女だという三羽の兎獣人の一羽ことアトロポスが、誤って目覚めさせてしまったモノの足音だろうか⁉
俺達が今いる洞穴の奥から、カサカサという音が聞こえてくる……む、蛇が地面を擦りながら進む音だって⁉
く、一体、どんな奴なんだ! 聖地アンザスから持ち出してきたモノのひとつである懐中電灯の灯りで、洞穴の奥を照らしてみるのだった。
「へ、蛇人間です、キョウ様!」
「あれはラミアではないか? うんうん、間違いない。わらわの愛読書である怪物百選にも載っておるモノじゃ!」
「うむ、ここはラミアの巣のようだ!」
「ラミア? あの蛇女のことかー!」
ふえええ、一難去ってまた一難だな!
俺と小フレイヤが持つ懐中電灯の灯りが、上半身は白いブラウスを着た若い人間の女だけど、下半身は獰猛な大蛇という半人半蛇の怪物ラミアの姿を照らし出す!
「ま、眩しいっ! なんですか、その光は!」
「あ、ゴメン!」
「むう、まあいいでしょう。さてと、おはようございます。久々に起きたら、美味しそうな兎ちゃんが二羽増えました~☆」
「「わー、俺は食べ物じゃないィィ‼」」
え、美味しそうな兎ちゃんが二羽増えた?
あ、ああ、兄貴とヤスのことか……って、おい!
ラミアの奴は、冬眠していた自分を目覚めさせたアトロポス、それにラケシス、クロートーにプラスするかたちで兄貴とヤスも食べ物として見ているようだ。
「兎の丸焼きは確かに美味いな……ジュルジュル。」
「アレス、ダメよ。生で食べちゃー!」
「お、おい、俺達は食べ物じゃねぇ!」
「さて、前門の虎、後門の狼ってヤツですね、お姉様。」
「あ、ああ、どうする……戦うか!」
「あ、あのぉ、私には戦う気ないっすわぁ……。」
「えっ⁉」
「むしろ、表の五月蠅い連中を黙らせてもられば……あ、空腹で何もできないわぁ。」
前門の虎、後門の狼――と、そんな危機的状況に陥ったかと思ったけど、どうやらラミアには戦闘意欲がないようだ。
オマケに空腹で何もできないとか……ほ、本当かよ!
「ん、お前……全身甲冑を身に着けている、お前だ! メロンパンを隠し持っているな!」
「なんのことかなぁ~……わ、何をする!」
アシュトンはメロンパンを隠し持っている⁉
わ、ラミアの獰猛な大蛇の下半身が、そんなアシュトンの身体に絡みつく……あ、本当だ! ポロポロとたくさんのメロンパンがアシュトンの骨々な骸骨の身体を覆っている全身甲冑の隙間から落っこちてくる。
むう、やっぱり隠し持っていたのかよ! と、ラミアは地面に落っこちたメロンパンに飛びつくのだった。
「ウメーウメー! 久し振りに食べるメロンパンは最高だなぁ!」
「そ、そうか、それは良かった……。」
「ふう、美味かったぁ……さ、コイツはメロンパンの褒美ってヤツよ。受け取ってくれると嬉しいなぁ。」
「んじゃ、ありがたくもらっておくよ……ん、俺の手と同じくらいの大きさなの銀色の石……しかも何個も! む、ほのかに赤く光っているな?」
メロンパンの褒美?
ラミアから大量の銀色の銀色の石を手渡される。
大きさは大体、俺の握り拳と同じくらいかな?
で、懐中電灯の灯りを浴びせると、ほのかに赤い光を放つんですけど……。
「あ、それはオリハルコン鉱石だ!」




