EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その17
オリン山大神殿内では、定期的に何かしらのイベントが行われるとか――。
神歌祭も、そのひとつである。
さてさて、どんなイベントなのやら……。
「神歌祭とは、一体、どんな祭りなの?」
「ん、簡単の説明すると、自分こそ全知全能の歌姫と称するモノが降臨するんだ。」
「むう、全知全能の歌姫!? 傲慢な人物な想像したぞ。」
「ああ、俺もだ! だけど、同じ歌姫として是非とも逢ってみたいもんだぜ!」
「私も逢ってみたいなぁ、一応、歌姫のつもりだしね!」
「なあ、まさか、その全知全能の歌姫って……。」
へえ、全知全能の歌姫と称すモノが降臨するイベントなんだ……ん、まさか!?
「オリン山の天空姫……ゼウリスのことだよ。」
「わお、予想的中かよ!」
「あの女神様は歌姫でもあるんだ。んで、ゼウリス親衛隊って連中は、その熱狂的な信者で……。」
「ああ、わかるよ。歌姫という分類されるモノには絶対について回る存在だしね。」
ハハハ、歌姫と、その信者という構図は、俺が本来いるべき世界と同じっぽいなぁ。
「だけど、チャンスかもしれない。集団でオリン山へ行くワケだしね。」
「え、チャンス?」
「ああ、オリン山へ入山する際、城下町にいる以上、純白城ことオリン山大神殿を経由しなくちゃいけないんだ。そんなワケで入山手続き等を行う神官達が邪魔くさくてね。」
「じゃあ、神歌祭のおかげで、あのゼウリス親衛隊のような面倒くさい神官達もいなくなるってこと?」
「まあ、そうなるかな? 僕はいつも神歌祭が行われている最中にオリン山へ入山するんだ。手続等が面倒だからね。」
そういえば、アイツらは神官という面も持ち合わせていたな。
歌姫でもある天空姫ゼウリスが降臨するという神歌祭の準備などで忙しくなる故、オリン山へ行くために経由しなくちゃいけない大神殿内から神官達がほとんど出払うので入山手続きなど面倒くさいことをしなくて済みそうな予感がしてきたぞ。
「じゃあ、早速、行こうぜ! うおっ……悪い悪い!」
「ん、ソロン、どうした?」
「あ、ああ、この店に入ろうとしていたのか知らんけど、そこで白い鼬を連れた少年とぶつかっちまってな。」
ん、メルクリウスの宝石工房へやって来た客なのかは知らないけど、確かに白い鼬を連れた少年がいる。
十八、十九歳くらいか……少女のように線が細い小柄な少年だな。
「このっ! どこを見ているんだ!」
「ハハハ、悪いな、少年!」
「ん、ソロンさん、ソイツは男のコじゃないよ。女のコだ。アレがないしな、クククク……。」
「あ、ホントだ! 私達以外にも男装女子がいるとはね!」
「ヒイイイッ! どこを触っているだ、お前らァァァ~~~!」
何を思ったのか大フレイヤと小フレイヤが、ガサゴソと少年の身体を弄る……と、どこを触って確認したのはあえて触れないでおくけど、白い鼬を連れた少年の正体は、どうやら男装女子のようだぞ。
「ハハハ、単なるスキンシップさ!」
「うんうん、女同士じゃん。男の人で触られたワケじゃないでしょう?」
「な、なんか違うような……。」
「ううう、この変態姉妹!」
「おい、俺達はそんな関係じゃないぞ!」
「そうよ、そうよ! 失礼しちゃうわ!」
「ん~……ふたりって容姿が似てるし、姉妹とか母娘に見えなくも……。」
大フレイヤと小フレイヤの言っていることは、どこかズレている気が……。
しかし、このふたりの容姿って背丈や胸の大きさ以外はホント似てるなぁ、姉妹、そして母娘のように――。
「それはともかく、アポロじゃん!」
「一緒にいるのはディアナ?」
「あっちゃんにウェスタ? ああ、彼女はミケ、猫みたいな名前の人間だ。行方不明になっている相棒であるディアナにそっくりなんでコンビを組んだってところだ。」
白い鼬が喋る――まあ、獣が喋るなんてもう珍しくはない光景だ。
で、一緒にいる男装女子の名前はミケというらしい。
ふーん、行方不明になっている相棒のディアナとやらにそっくりねぇ。




