EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その15
「なあ、メルクリウスさん、アンタ達の中にいるの?」
「ん、いないよ。店長ならカウンターのところのいますよ。」
「ん、板状のエメラルドの塊があるところに? あ、なんかいる!」
フワリと天井からぶら下がるシャンデリアから舞い降り降りてきた小さな三人の妖精さんの中には、俺達が今いるメルクリウスの宝石工房の主――店主のメルクリウスはいないようだ。
そんな店主のメルクリウスは、どうやら店の奥にある板状のエメラルドの塊が置いてあるカウンターのところにいる緑色の服を着た髪の長い女のコの姿をした小妖精のようだ。
「いらっしゃい、物好きなお客さん。」
「むう、物好きって……。」
物好きだぁ……俺は気にしないけど、普通に考えて客に対し、それを言っちゃあ不味いんじゃないのか、おい……。
「あ、僕はメルクリウス。こんな小さなナリをしているけど、一応、店主をやらせてもらっている。」
「メルクリウス、久しぶりね! 早速だけど、オリハルコンの鉱石があれば買わせてもらうわ!」
「ん、誰かと思ったらメイヴじゃん! それにあっちゃんとウェスタ、それにデュオニスも一緒じゃん……と、悪いけど、そんなオリハルコンの鉱石は品切れだよ。」
ん、メルクリウスという名前の妖精さんは、アフロディーテやウェスタ、ついでにデュオニスとも知り合いのようだ――ん、オリハルコンの鉱石は品切れ中だって!?
「えええ、品切れ中なのぉ!」
「うん、この間、大量に買ってくれた好事家がいてねぇ……。」
「あちゃー、もう少し早く、ここへ来れば良かったなぁ……。」
「だねぇ。だけど、人間の男な小指の爪くらいの大きさのモノだよ?」
「小さいなぁ、ウルカヌスに頼まれたサイズのモノは、流石にオリン山へ出張って採掘しなくちゃいけなそうだな。」
「ん、ウルカヌスを知っているのかい?」
「う、うん、あのアライグマに頼まれたんだ。俺の手と同じ同じサイズのオリハルコンの鉱石を採ってきてくれってね。それでアンタを探していたんだ。」
なんだかんだと、俺達もメイヴと同じくオリハルコンの鉱石を得なきゃいけない。
アライグマの獣人のウルカヌスの依頼、それにディルムを人間に戻すための魔法の薬をつくるために必要不可欠な四つの素材のひとつなんだよなぁ、オリハルコンは――。
「あ、そうだ。君達さえ良ければ、オリン山へオリハルコンの鉱石を採掘しに行かないかい? アダマスやミスリルといった希少金属の鉱石も得られけど、どうする?」
「ああ、是非とも!」
「アダマスやミスリルも手に入れようと思っていたところだ。」
「プロメテウスの草は見つかるかしら、メルクリウスさん?」
「ん、悪いけど、植物に関しては専門外なんだ。」
「ま、行ってみよう。ブックスに挿絵が載っていることだしね。」
メルクリウスがオリハルコンの鉱石を採掘しに行くと言い出す。
丁度いいからついて行ってみよう。
アダマスやミスリルの鉱石も楽に得られるかもしれないしな……さて、プロメテウスの草は見つかるかどうかはさっぱりだな?
専門外だってメルクリウスが言っていることだし――。
「ん、なんだか外が騒がしいわね……ん、アイツらは!?」
「ウェスタ、どうしたの?」
「どうやら密告をした輩がいたらしいわ。」
「み、密告!?」
「メイヴちゃんのことをどこぞの誰かさんがゼウリス親衛隊に密告したんだと思う。ほら、窓の外を見て……武装した物騒な男達の姿が見受けられるわ。」
メルクリウスの宝石工房の外から、ワイワイガヤガヤと騒がしい声が聞こえてくる。
むう、確かに武装した物騒な男達の姿が……ひょっとしてゼウリス親衛隊がやって来たの!?




