EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その13
「けけけ、煙いっ!」
「ゴホゴホッ! なんなのよ、この煙は……わお、メイヴが人間に変身した!」
むう、あの煙はメイヴが人間の姿に変身した際に起きたモノだったのか……。
と、そんなメイヴは、純白のベールを純白のドレスといったウエディングドレス風の衣装を優雅に着こなす長身痩躯の黒髪の美女の姿に変身する。
でも、ライオンのような先端がフサフサした尻尾や耳は、そのまんまって感じだ。
うーん、完全に人間になりきれていないな、こりゃ……。
「これぞ、人化の法ってヤツだ!」
「人化の法!? 以前、兄貴を一時的に人間の姿に変えたアレか、ブックス?」
「うむ! どうやら、あのメスライオンは、そんな人化の法を会得しているようだ。」
「な、なんだとー! 羨ましい奴め!」
「兄貴、そこにいたのかよ……痛ぇ、八つ当たりすんなよぉ!」
そういえば、兄貴の夢は人化の法を会得して人間になることだったな。
で、俺がブックスに記された呪文で一時的に人間の姿に変身させた覚えがあるぞ。
さて、あの一件以来、兄貴は人化の法を完成させるべく修行を行っているんだが、まったく実現する気配がないんだよなぁ。
「お、兎ちゃん、羨ましそうだな……う、うぐっ!」
「ありゃ、大人の姿から子供の姿になっちまったぞ。」
尻尾と耳はライオンの時のまんまである人間の姿に自力で変身できたことを兄貴に対し、自慢するメイヴだったけど、その刹那、シュルシュルと身体が縮み始める。
で、あっと言う間にちんちくりんな十代前半の女のコの姿に……。
「うわああ、胸が小さくなってしまった……。」
「むう、でも、人間の姿を維持できているだけでもいいじゃないか……。」
「兄貴、どうでもいいけど、八つ当たりはやめてくれよ。嫉妬なんてかっこ悪いぜ……。」
「そのコのことはともかく、さっきお姉様を戦棍でぶん殴った男達を私がフルボッコにしてきましたよ!」
「ついでにオリン山大神殿のことについて訊いておきました。」
メイヴは胸が小さくなったことを気にかけているようだ。
うーん、大きさなんてどうでもいいだろう。
ウエディングドレス風の衣装を優雅に着こなす長身痩躯の黒髪美女の姿から、ちんちくりんな女のコの姿になってしまったとはいえ、人間の姿を維持できているんだし……。
それはともかく、さっき俺を戦棍でぶん殴った男とその仲間をフィンネアとミネルがフルボッコにし、今いるオリン山大神殿に関する情報を聞き出したようだ。
「あ、そうそう、メルクリウスさんは宝石屋の主人らしいです。」
「へえ、宝石屋ねぇ。」
「オリン山はルビーなどの宝石の原石も産出するから、〝宝石の山〟という面も持っているわ。故に。宝石屋は珍しくないかも……ほら、そこの屋台でも普通に売ってるわ。」
「ん、そうなのか、ウェスタ?」
へえ、ここじゃ宝石屋は珍しくないねぇ。
で、ウェスタがすぐそこにある屋台で青い石を買ってきたようだ。
「メルクリウスさんとやらを探すのが大変だな、こりゃ……。」
オリン山大神殿内には宝石屋が多いというワケで、ロムキア奇岩群で出逢ったアライグマの獣人ことウルカヌスが言っていた協力者――メルクリウスを探すのは大変だなぁ、こりゃ……。
「ん、メルクリウス? ソイツなら私の知り合いだ。実はソイツにオリハルコンを得ようと思っていたんだ。つーか、一緒に来るか、案内するよ。」
「ああ、頼む!」
むう、メイヴは件のメルクリウスからオリハルコンの鉱石を得ようとしていたようだ。
ふう、これで探し回らずに済むな……よし、案内してもらおう!




