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EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その9

 兎天原に住まい獣人は、その大半は兄貴やヤスと同じ兎獣人であるけど、俺が今いるロムキア奇岩群には、そんな兎獣人があまり住んでいないようだ。


 で、その代わりとばかりに鍛冶屋のウルカヌスと同じアライグマの獣人がたくさん住んでいる。


 そうそう、筍や煙突に見える奇岩に穴を掘って住居をつくりあげたのは、どうやらウルカヌス達アライグマの獣人のようだ。


 アライグマの獣人は、ケモニア大陸に住む獣人族の中では、特に手先が器用なモノが多いというわけで彼らが数多く住むロムキア奇岩群は、一種の職人村となっているらしい。


 さて、俺達は鍛冶屋のウルカヌスの鍛冶工房へと足を踏み入れるのだった。


「これを君達の渡そうと思ったんだ。」


「うお、男物の服!?」


 ウルカヌスの鍛冶工房内のあっちこっちには、彼とその弟子がつくった売り物――金属製の武器防具、それに生活用品が、ところせましと飾られている。


 ちなみに、ウルカヌスと弟子達は主に兎獣人や猫獣人といった小型動物型の獣人専用の武器防具を主につくっているようだけど、その一方で裁縫職人としての副業も行っているみたいだ。


「僕は鍛冶屋を営む一方で衣服も……と、そんなことより、オリン山大神殿へ行くなら男装した方がいいよ。なんだかんだと、君達のパーティーは女のコばっかりだしね。」


「あ、ああ、確かに女ばかりだなぁ!」


「この全身甲冑の中身は骸骨だけど、俺は男だよ、ハッハッハ!」


「ふ、確かに女ばかりだな。」


「見た目は猫だけど、俺は男だぞ。」


「ボクもいるぞ、忘れてないか?」


「ハハハ、私も男だー!」


「え、フォンソスとフィンクス、いつの間に!?」


「お兄様、叔父様、気持ち悪いです! いきなり姿を現さないでください!」


「「ひ、ひでぇーっ! わあ、何をするやめれー!」」


 オリン山大神殿へ向かう俺の仲間達は、そのほとんどが女ばかりである。


 で、男はアシュトン、ソロン、ディルム……うお、フィンソスとフィンクスの奴、いつの間に!?


 あ、あれぇ、コイツらって聖地アンザスで自動人形にさらわれて行方不明になった気がしたんだが……。


 さて、コイツらが鬱陶しかったのかウルカヌスの鍛冶工房で働く彼の弟子のアライグマの獣人達によって強引に外に追い出されてしまう。


 しかし、あのふたりが〝いる〟ことにまったく気づかなかったのは、ある意味、不覚ってヤツだな。


「なるほどね。あそこはオリン山の入り口だし、男装した方が無難ね。」


「むう、どういうこと、ウェスタ?」


「あそこに巡礼等の理由で訪れた女性を強引に追い出そうとする面倒くさい連中がいるのよ。ああ、獣人は対象外らしいわ。」


「むう、酷い奴がいるもんだな! ボクがボコボコにしてやる!」


「お兄様は返り討ちに遭うと思いますよぅ!」


「うむ、フィンネアの言う通りだぞ、フィンソス!」


「叔父様も油断していると……。」


「ハハハハ、そんなことより、温泉があるホテルがあったよ。一緒に行かないかい?」


「こらこら、フィンソス。私が誘おうとしていたんぞ……うごっ!」


 ウルカヌスの弟子達に鍛冶工房の外に追い出された筈のフィンソスとフィンクスが、いつのまにか鍛冶工房内に戻ってきている。


 だけど、再びウルカヌスの弟子達に鍛冶工房の外に追い出されてしまう――まったく、話を別方向に傾かせようとしやがって!


「なあ、訪れる女性を追い出そうとしている連中って何者なんだ?」


 さ、本題に戻そう。


 で、オリン山大神殿に巡礼等の理由で訪れた巡礼者の女性を追い出そうとする連中の詳細についてウェスタが何気に詳しそうなので、俺は訊いてみるのだった。

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