EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その6
エフェポスの村の南西には、標高四千、五千メートルの高山が連なるガイアーラ山脈を形成しているやまのひとつが、俺達が向かっているオリン山だ。
何度も説明したと思うけど、あの山には天空姫という女神が住んでいる。
同性を忌み嫌う一方で、イイ男に目がない好色な女神様だとか……。
「おお、地面から生えた筍のような岩があるぞ!」
「いや、これは煙突だよ、お姉様。」
「へえ、これはウワサの奇岩群かぁ~。」
「奇岩? 珍妙なかたちをした岩のことか、メリッサ?」
「そうですね、キョウ様。ちなみに、奇岩群の中には岩窟寺院があったりしますね。住んでいるモノもいるようですよ。」
さて、俺達は地面からにょっきりと顔を出した筍や煙突の形状をしたモノを筆頭とした珍しい形状く、そして奇怪な形状をしたが、あっちこっちに見受けられる奇岩群へと俺達は立ち寄るのだった。
「よし、ここで休憩しようぜ。」
「賛成! なんだかお腹減ったし。」
「お、あの筍みたいな奇岩は喫茶店みたいになっているぜ。行ってみよう!」
さて、俺達がガイアーラ山脈を形成する山のひとつであるオリン山へ行く途中に立ち寄った奇岩群だけど、筍や煙突に見える奇岩を利用するモノ達がいるようだ。
休憩しようと言い出すソロンに続くかたちで大フレイヤと小フレイヤが向かった先にあるのは、奇岩を掘り抜いてつくられた喫茶店があるしね。
「まだオリン山大神殿にはついてねぇけど、あそこに到着したら、どっちが先にディルムを人間の姿に戻せる魔法の薬の材料を先にGETできる勝負しないか?」
「ちょ、今からそれを決めるのは早くないか、ソロン君!」
「君なんてつけなくていい、ソロンって呼べよ。つーか、アンタは俺の宿敵だ。女だからって容赦はしないぜ!」
「あ、あのなぁ……。」
ふええ、ソロンの奴、勝手に話を進めやがって!
それにアンタは俺の宿敵だって宣言してるけど、俺にはその気はないっつうの!
「さて、もしも俺が勝ったら……妻になってもらうぞ!」
「は、はあああああっ!」
コ、コイツ、また勝手なことを……。
それに妻になれとか、冗談じゃないぞ、何を言い出すんだァァァ~~~!
「ソロンさんカッコイイし、別にいいんじゃないですか、キョウ様?」
「このままだと行かず後家になってしまいますよ! あ、ゾンビですが私がキョウ様と変わってもイイですよ?」
「お、お前ら、何を言い出すんだァァァ~~~!」
「私はまだ婚礼をあげていませんけど、一応、ディルムの妻のつもりです。お姉様もこの際……。」
「ダメ! お姉様は私と結婚するんだぁー!」
む、むう、メチャクチャ言いやがって……。
それにニヤニヤ笑っているし、俺を馬鹿にしているのか、お前ら!
「男は飽きると離婚を申し出ると聞いたことがあるのう。」
「結婚なんてやめておけ! 私のように騙されるだけだぞ!」
「ああ、それもありですね。女のコを騙す悪い男がたくさんいるって聞きますし!」
「結婚しても浮気を繰り返す奴もいるぜ。神様の中にも、そーゆー奴がいるって聞いたことがある。」
「うううう、俺は負ける気はないぞ! 誰がお前なんかにィーっ!」
身体は女でも、心は男のままなんですけど……故に、妻になれとか言われると物凄く困惑するよ、まったく……。
故に俺は本気でアイツを……ソロンの奴を素材集めで負かせてみたくなるのだった!
「あ、あのぉ、オリン山大神殿へ行くとか言ってましたよね? それなら僕の頼みを聞いてもらえますか?」
「む、アライグマ!? アライグマの獣人?」
「鍛冶屋のウルカヌスと言います。」
「ふーん、それで頼みというのは、一体?」
ん、古ぼけてセピア色に変色した白地のエプロンを身につけたウルカヌスと名乗るアライグマの獣人が話しかけてくる。
オリン山大神殿へ行くなら頼みが――と、言っているので話くらいは聞いてやるかな。




