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EP11 俺、死神と出遭う。その24

「ヴァルムントの奴、恐らくリッチと化したな!」


「リッチ!? アイツはリッチな奴なのか!」


「金持ちなのか、アイツは?」


「そ、そのリッチではなくて……。」


「冗談だよ、冗談。俺にだってわかるさ。」


「み、右に同じく!」


 リッチと聞くと、金持ちな奴――と、思うところだろうけど、ヴァルムントの場合は、リッチはリッチでも不死者の中でも最強の部類に入るモノである。


 リッチとは、無限の知識を求める魔術師が永遠の命を目指したなれの果てだと言われる不死者の王のような存在である。


 ふええ、面倒くさい輩と遭遇しちまったもんだなぁ……。


「ところでアンタは、ここで一体、何を……五百年前の復讐をするため?」


「そんなワケがないだろう。私は〝とある魔術〟の実験を繰り返している。五百年経っても実現しなくて困っているんだがねぇ……。」


 五百年経っても実現しない魔術の実験って何!? コイツは一体どんな実験を――。


「フフフ、お前達に話しても理解できんだろう。さて、盟友のグリーネが一緒とはいえ、邪魔くさくなってきたな……。」


「う、うわああ、凄い殺気だ!」


 え、邪魔くさくなってきた!?


 ヴァルムントの目玉が腐り落ちた左右の眼窩がキュピーンと怪光を放つ!


 まさか俺達に襲いかかってくるのか!?


「ヴァルムント、貴様! 私もいるんだぞ!」


「知るか、そんなこと! お前らは邪魔くさいんだ……私の研究の邪魔をするな!」


「何か邪魔をしましたっけ? うわ、足許が光り出した!」


「う、うわっ! なんだ、この光は!」


「ああ、キョウ様!」


「ふ、ふええ、お姉様!」


 ひ、光が広がっていく! くう、まぶしくて眼を開けていられない! 


「ん、キョウじゃないか!」


「ううっ……あ、兄貴!? それにウェスタ……わあ、ここは光桜学園の校門前じゃないか!」


 え、何故、俺は光桜学園の校門前に!?


 まさか、ヴァルムントは俺達を地上に強制転送したのかも?


 むう、兄貴とウェスタがいるし、それは間違いなそうだが……。


「ふう、これで一安心だ。」


「え、一安心?」


「そこにあった穴の中にウェスタと一緒に入ってみようと思っていたところなんだ……って、そんな〝穴〟が消えてなくなっている!」


 兄貴が言う〝穴〟とは、ヴァルムントや夜魔屍鬼の群れがいた地下深くに埋もれた古代遺跡である。


 と、そんな穴こと底なし穴のナラカの縮小版は、いつの間にかなくなっており、オマケに東の空が明るくなってきているし、夜魔屍鬼の残骸っぽいモノがあっちこっちに見受けられるんですけど……


 ん、それはともかく、兄貴とウェスタを俺達を探しに行こうと、あの穴の中に飛び込もうと思っていたようだ。


「なるほどね。あの穴の地下に古代遺跡かぁ……ひょっとして名無しの神殿かもね。」


「むう、名無しの神殿!?」


「考古学者の間では、通称、名無しの神殿ですからね。仮に、あの地下古代遺跡が、件の神殿がアレだったら――。」


「私もある程度、考古学に精通しているけど、確か本来の名前を誰も知らない筈よ。まあ、聖地アンザスで大昔に起きた地殻変動で地下に埋没したしね。」


 ヴァルムントの奴、一体、どんな研究を――てか、誰も邪魔しないっての!


 そんなヴァルムントの強制転移魔術によってナラカの縮小版的な穴の中の飛び込んだ俺達は、誰ひとり欠けることなく地上へと送り返されたようだ。


 さて、奴がいた地下遺跡及び図書館は、ウェスタやメリッサの話じゃ名無しの神殿と呼ばれる場所の一部かもしれない。


「あ、そうそう、あの図書館から本を何冊か持ってきましたよ、皆さん!」


「ア、アシュトン君! 持ち出してもイイものなのかな、それ……。」


 バサバサバサッ――と、動く骸骨という禍々しい姿をカモフラージュするためにアシュトンが身にまとっている全身甲冑の中から、何冊もの古ぼけた本が地面に落下する……ちょ、地下図書館から持ち出したモノだろうけど、後から後悔しそうな気がしてきたぞ!


「ん、死霊秘法(ネクロノミコン)……う、頭が痛くなってきた!」


 そんな題名の本を拾った途端、俺は激しい頭痛に襲われるのだった。


「お姉様、大丈夫ですか?」


「あ、ああ、この本を放り投げたら頭痛が止んだよ……ったく、なんだったんだよ、あの本は!」


「ところでお姉様、私達は〝何か〟忘れてはいませんか?」


「ん、なんだっけ? まあ、思い出せないならどうでもいい話なんだろう?」


「ハハハ、ですかね~☆」


 フィンネアが〝何か〟を忘れているって言う……あるぇ~なんだっけ?


「ううう、ボクのことを忘れちゃいないか!」


「非道なぁ、まったく……。」


 ん、そんな声が聞こえてきたけど、恐らくは俺の気のせいだろう。


 さ、一旦、光桜学園に戻るとするか――。

 

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