EP11 俺、死神と出遭う。その14
「うーん、これじゃ朝になるまでエフェポスの村には戻れないな。」
「じゃ、ここに泊まっていこうぜ、姐さん。」
「ああ、そうだな。外にアレが蠢いている以上、下手に出ることができないしなぁ……。」
仕方がない。光桜学園で夜を明かすか――。
そんな光桜学園の校門の外を動く腐乱死体――夜魔屍鬼がうろちょろしているしなぁ……。
「しかし、聖地って呼ばれている場所なのに、エクス・デウス・マキナ――機械仕掛けの神でしたっけ? そう名乗る自動人形も含めると物騒なモノがたくさんいますね。」
「夜魔屍鬼、自動人形、そして光桜学園の生徒達の三竦みが形成されていたりして!」
「むう、それは違う気がする。私達がここへやって来たのは七日前だし……。」
ふむ、三竦みを形成しているかはともかく、生徒のひとりの話じゃ七日前だから一週間前に、突然、聖地アンザスに光桜学園の校舎ごと召喚されてしまったようだ。
「アンタ達、食べ物よ。今日はこんなモノしか見つからなかったけどね、ふう……。」
「あ、生徒会長!」
「あら、ご苦労さん、フレイヤちゃん。」
「フ、フレイヤ!?」
ん、小柄な金髪碧眼の美少女が大きな袋を担ぎながら、俺達がいる保健室にやって来る。
どうやら生徒会長のようだ。
で、アヒルのアフロディーテがフレイヤって呼んでいたぞ。
「お、俺もフレイヤって名前なんですけど……。」
「ハハハ、同じ名前ってヤツだな。」
「ちょ、同じ名前ですって!? なんでアンタみたいなおっぱいだけ無駄にでかい年増が、この私と同じ名前なのよ!」
「ム、ムムムッ……聞き捨てならない言葉だな! つーか、俺は年増じゃねぇ! まだ二十二歳だ!」
「うっさい! 二十歳を超えた人間は、み~んな年増なのよ! この馬鹿おっぱい!」
むう、生徒会長ことフレイヤは、何故かは知らないけど敵対心丸出しって感じだ。
出逢って早々、ライバル視ってヤツか!?
「大フレイヤと小フレイヤって呼んだ方がいいのかなぁ……。」
「大人フレイヤと子供フレイヤでいいと思います。」
「いや、巨乳フレイヤと貧乳フレイヤだって!」
「そう呼ぶなら巨フレと貧フレと略した方が呼びやすいのう。」
「「お、お前ら適当な名称つけんなー!」」
「ま、まあいいわ。同じ名前でも可愛さは私の方が上だしね!」
「何ぉう! 生意気な貧乳チビだな、まったく!」
「まあまあ、落ち着けよ、お前ら!」
どっちも美人だ。
巨乳、貧乳と胸の大きさなんてどうでもいいだろう。
とにかく喧嘩両成敗だ――俺は口論するふたりのフレイヤの間に割って入るのだった。
「さて、ちと訊きたいんだが、あの腐った死体共は日が暮れると同時にナラカとかいう底なし穴から現れるんだっけ?」
「ああ、そう訊いているよ。現場を見たワケじゃないけど……。」
「ふむ、じゃあ、東の空が明るくなる頃、連中はナラカの中に戻るのかな? あの底なし穴に飛び込むとか――。」
「そ、それを聞かれても、なんて答えればいいのか……。」
と、グリーネがそんな疑問を光桜学園の生徒達にぶつけるのだった。
あ、ああ、俺もなんだかんだと気になっていたんだよなぁ。
夜魔屍鬼の出現の仕方について――。




