表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/836

EP11 俺、死神と出遭う。その13

 謎の少年少女が本拠地している〝学校〟の正式名称は、光桜学園(こうおうがくえん)というらしい。


 で、謎の少年少女の正体は、俺が本来いるべき世界から召喚された同じ穴のムジナだったワケだ。


 詳しい事情はわからないけど、次元の塔に光桜学園ごと召喚されてしまったとか――。


 ちなみに、聖地アンザスに召喚されてしまった謎の少年少女――光桜学園の生徒の数は、光桜学園の全生徒ではなく部活等の理由でたまたま居残りしていた四十二人+教員七名を合わせた四十九人……ん、数字的に不吉だなぁ。


 そう思ったのは俺だけかな? まあ、それはさておき。


「ま、まぶしいっ!」


「ふむ、夜魔屍鬼はいないようだ。この光を浴びてもなんともないみたいね。」


「じゃあ、このお姉さん達は夜魔屍鬼じゃないのね、先生?」


「ええ、吸血鬼が混じってるけどね。」


「つーか、疑いが晴れたんだ。もう放してくれよ!」


 ふ、ふう、なんとか疑いは晴れたな。


 だけど、俺達の背後にいる連中は、クロスボウやらスタンガンを身構えたままだ。


 まあ、吸血鬼のグリーネに恐怖してのことだろうけど――。


「ん、そろそろ〝奴ら〟の時間だわ!」


「じゃあ、校門を閉めて来ます!」


「この学校の門には〝奴ら〟を祓う力が宿っているわ。」


「そ、そうなんだ……って、その〝奴ら〟とは一体!?」


夜魔屍鬼(ナイトグール)共のことよ。ほら、外を見ればわかるわ。」


「ん、太陽が見えなくなっているわね、あっちゃん。」


 気づけば、太陽が西の地平線の彼方に――と、その代わりとして煌々と輝く月が夜空の主役として君臨する夜がやって来た!


 そうなると出現するのが、件の夜魔屍鬼だ。


 さてさて、どんな姿なのやら……。


「奴らはゾンビなんでしたっけ?」


「ええ、そうよ。」


「ちなみに、私もゾンビです。」


「私もゾンビです。」


「私も、私も!」


「あ、俺は骸骨(スケルトン)さ!」


「え、ゾンビ……それに骸骨!?」


「わらわは大量の水を定期的に摂取しないと乾燥遺体(ミイラ)になってしまう。」


「な、なんですってー! でも、そうは見えないわね。」


「まあ、ゾンビはゾンビでも動く腐乱死体にならないのは、なんだかんだとキョウ様のお陰です。」


「うむぅ……。」


 俺の友人は不死者だらけだなぁ――と、改めて思うのだった。


 で、動く骸骨であるアシュトン以外の不死者の友達は、生前の姿が一切、崩れていない美ゾンビという感じだ。


「先生、〝奴ら〟が来ました! 校門の前をうろちょろしています。」


「ふう、校門を閉める際、危なく捕まってしまうところでした!」


「え、夜魔屍鬼がやって来た!?」


「そこにある暗視装置がついている双眼鏡で校門の周辺を見ればわかるわ!」


 暗視装置がついた双眼鏡まで、ここではそんなモノまで見つかるのか――。


「じゃ、お言葉に甘えて……うわああああ、なんだ、アレは!」


「キョウさん、私に見せてください! ひゃあ、腐った動く死体がウロウロしている!」


「私にも貸してください! ふえええ、同じゾンビなのに、私やミネルさんとは、外見に天と地の差があります! 腐敗するってことは本当に怖いことですね……。」


 く、腐った死体だ……そ、そんな腐った死体が校門の外で蠢いている!


 アレがウワサの夜魔屍鬼か!?


 俺は暗視装置についた双眼鏡で奴らの異形でおぞましい姿に驚愕し、思わず悲鳴をあげてしまう!


 で、続くかたちで双眼鏡を覗きこんだエイラとメリッサも悲鳴をあげる。


「今のところ夜魔屍鬼は一体だけど、多い時は十体以上、校門の外を徘徊しているんだ。だから夜になると下手に外に出られなくなるんだ。」


「そ、そうだよなぁ、下手に出られなよな……。」


「外に出られない理由は、それだけじゃないぞ! 俺は見たんだ。アイツらが捕らえた兎獣人を〝生きたまま〟食べている姿を!」


「ふ、ふええ、マジかよ!」


「むうう、まるで狼獣人(ワーウルフ)だな! 狼獣人(あいつら)兎獣人(おれたち)を捕まえてバリバリと生きたまま食べるって話を聞いたことがあるんだ……。」


 謎の少年少女こと光桜学園の生徒のひとりが話しかけてくる。背の高いスポーツマン風の少年だ。


 と、夜魔屍鬼は俺がよく知る典型的なゾンビのようだ。


 俺に話かけてきたスポーツマン風の少年が、連中に捕まった兎獣人が生きたまま食べられているおぞましい光景を目撃したっていうし……。


「アイツらは俺達、人間も対象かもな。〝食料〟として……。」


「十分にありえる話だ。あ、そうそう、奴らは日が暮れるとナラカから現れるって仲良くなったマーテル王国の兵士さんが言ってたよ。嘘か本当かは知らないけどね。」


「ナ、ナラカって、あの底なし穴の?」


「うん、だから仲良くなったマーテル王国の兵士さんや作業員達は陽が暮れる前に作業を取りやめて奴らが入ることができない結界を張り巡らせた駐屯所に戻るんだってさ。」


「ふ~ん、そうなんだ。つーか、ここは聖地なんだろう? そんな場所になんで、ああいう輩が出没するのか疑問なんだが……。」


 夜魔屍鬼は光を忌み嫌う闇の住人であり、おまけに兎獣人だけではなく俺達、人間も〝食料〟の対象と見なしている可能性も高いと思う。


 さて、奴らは日が暮れるとナラカから出現するようだ。


 ひょっとして、あの底なし穴をよじ登って来るのかよ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ