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EP11 俺、死神と出遭う。その12

「やだ、この部屋、臭い……。」


「臭いけど、無害だ。これは消毒液のニオイだからな。」


「消毒液って何?」


「んー、わからないか、やっぱり……。」


「私はわかるぞガウ!」


 ここは消毒液の臭いがプンプンするなぁ……。


 でも、懐かしいなぁ……。


 さて、俺達は〝学校〟の保健室へと連行される。


 で、俺達が逃げないように監視しているんだよなぁ。


 クロスボウをたずさえた眼鏡の少女を筆頭とした少年少女の集団が――。


「私がここにいる連中を皆殺しにしてやろうか?」


「あ、ダメですよ。アナタが行動すると惨劇に発展してしまいます。なので、ここは私が、この鉄拳で……。」


「そ、それはやめろって!」


 と、グリーネとエイラがゴニョゴニョと小声で、そんな話を……ちょ、何もしなくていいっての!


 あくまで今は――。


「ようこそ、お客さん達。」


「わあ、アヒル!」


「アヒルじゃない! 白鳥よ! で、アフロディーテという名前があるわ!」


「先生はアヒルに見えるけど、〝ああ見ても〟凄い方なんです。それに先生がいなかったら、夜魔屍鬼に私達は……。」


 保健室には白衣を着た一羽のアヒルがいる。


 アフロディーテって名前で、クロスボウをたずさえた眼鏡の少女は先生って呼んでいるんだが――。


「ん、ウェスタではないか!」


「あっちゃん、おひさ~☆」


「ふむ、ウェスタの仲間なら、この姉ちゃん達は安全だと思う――が、それは別として夜魔屍鬼かどうか一応、調べさせてね。」


 ん、アフロディーテとかいうアヒルとウェスタは知り合いのようだ。


 でも、夜魔屍鬼かどうかは調べるのは別の話のようだ、やれやれ……。


「なあ、調べるとか言う前に、その夜魔屍鬼について詳しく教えてくれよ。ゾンビなのはわかったんだが、それ以外はさっぱりなんだ。」


「アイツらについては、夜になるとどこからともなく現れて聖地アンザスのあちらこちらを徘徊するってこと以外、私達にもよくわからないわ……。」


「ふむ、夜の戸張が降りた頃から活動を開始する陽の光を嫌う闇の住人って感じだな。まるで吸血鬼のような奴らだ。」


「おい、私と一種にすんな! 私は陽の光なんざぁ、まったく気にならないしね~☆」


「そ、それはアンタが原種の……真祖吸血鬼だからだろう!」


 夜魔屍鬼については、白鳥を自称するアヒルことアフロディーテにもわからないようだ。


「むう、吸血鬼の真祖……そこの赤い派手な服を着ているコは、伝説の吸血鬼グリーネなのかしら?」


「うん、そうよ、何か問題でも? ああ、怖がらなくてもいいのよ。私はアヒルのお肉が大好きだけど、生で食べるほど野暮じゃないから~☆」


「ヒ、ヒイイッ! ト、トンでもないモノとも交流があるんだな、ウェスタ!」


「まあ、そうなるかなぁ。でも、彼女はあっちゃんも当然、知っているとは思うけど、あの老師ウサエルと〝とある盟約〟を交わした故に危害を加えることはないわ。」


「う、うみゅぅ……じゃあ、大丈夫ね! それじゃ、夜魔屍鬼かどうか検査させてもらうわよ!」


「あのなぁ、俺達は、そんな……うわ、まぶしいっ!」


 エフェポスの村の長老である老師ウサエルと知り合いなのか――と、それはともかく、アフロディーテの両目が山吹色、そして橙色の閃光を放つ!


 うう、この光は……太陽!?


 太陽が西の地平線も彼方の沈み込む直前の空のような色の光だ!

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