EP11 俺、死神と出遭う。その6
「これはこうやって使うんだぜ! そらぁー!」
「わあ、お姉様は曲芸師みたいですわ!」
「お姉様、私にも使い方を教えてください!」
「おお、それは馬の走る速度と同じ速さで大地を駆けめぐることができるんですね、キョウ様!」
「ハハハ、どれどれボクにも貸してくれよ。なんだか意外と楽に乗れそうそうじゃん……って、ぐわあっ!」
さてと、俺は自転車に乗ってみせる。
ケモニア大陸には――いや、この世界には本来は存在しないモノなだけに、俺の行為はトンでもなく奇抜で物珍しいかったんだろう。
グラーニアは曲芸師みたいだ――なんて言ってたしな。
気づけば、兵士達や作業員達までもが珍しがって、俺の周りに集まってくるのだった。
「へえ、それはそんな風に使うんだ!」
「コイツを使いこなせれば、馬を用意する必要がなくなるな!」
まあ、ごもっともな意見かな?
でも、自転車はメンテナンスが意外と必要だったりする乗り物なんだよなぁ。
この世界には自転車が存在しないので、仮にタイヤがパンクした場合、直す手立てがない故にガラクタになってしまいかねないし……。
「お姉様、これはどうやって動かすんです?」
「ふ、ふえええ、自動車まである! どれどれ……ああ、ダメだな。ガソリンが入ってないから、コイツは動かないな。」
「ガソリン?」
「ああ、それを動かすための魔法の……いや、燃える水だ。」
むう、自動車まであるよ、ここには――。
次元の塔は、まさかこんなモノまで召喚していただなんて……。
しかし、ガソリンが入っていないので一切、動くことはない。
そんなワケでグラーニアが見つけた自動車は、タダの巨大な邪魔くさい鉄の塊と化している。
「そういえば、今日はオートマタ達は大人しいな。」
「ん、自動人形のことですか?」
「ああ、ここにはたくさんいるんだぜ。」
自動人形だって!? 兵士のひとりそんなことを言い出す。
ロボットみたいなモノまでいるのかよ、ここは!
「お、ウワサをすれば――。」
「んんん……アレはラジコン戦車!?」
兎の中でももっとも小さい種であるネザーランドドワーフの兎獣人である兄貴やヤスと同じくらいの大きさのラジコン戦車が、俺達のもとにやって来る。
「オウ、見慣レナイ顔ダナ。ソコノ姉チャン達ハ――。」
「ラ、ラジコン戦車が喋った!」
「キョウ様、ラジコン戦車ってなんです?」
「あ、ああ、足許にいる動く玩具のことさ。本来はコントローラーってモノを操作して動かすモノなんだが……。」
「へえ、足許にいるコイツは玩具なんですね、キョウ様?」
「ああ、そんなところだな。一応、喋るようだが――。」
「オイ、誰ガ玩具ダヨ! 俺ハ玩具ナンカジャナイゼ!」
「ああ、さっき俺が言ってオートマタの一体だな、ソイツは――。」
「え、そうなの!?」
ふーん、オートマタ――自動人形とは、俺の足許にいるラジコン戦車のことのようだ。
でも、形状的には人形というカテゴリーのモノではないな。
一応、喋ることはできるようだが――。
「オット、変形シテオクカナ。」
「変形!? むう、確かに変形したけど、下半身はラジコン戦車のままだな。まるでガンタ……いや、なんでもない。」
おお、ガキゴキバキ――という金属音を奏でながら、ラジコン戦車がロボットに変形する。
だけど、下半身はラジコン戦車のままである。
要するに、ラジコン戦車の一部が人間の上半身のような形状に変形したって感じだな。
「ドウダ、かっこいいダロウ?」
「う、うーん、微妙……。」
「ナ、ナンダト! ト、トニカク、俺はらじこん戦車ジャナイゾ! でうす・えくす・まきなノルーダ!」
「デウス・エクス・マキナのルー? わ、ラジコン戦車がたくさんやって来た!」
「アリャ、俺ノ仲間ダナ。チナミニ、集マッタノハ、ゴク一部ダ。マダマダイルゼ。確認デキルダケデ百体ハイルゼ!」
「ふええ、たくさんいるんだなぁ……。」
さて、ラジコン戦車型の自動人形はルーと名乗る……デウス・エクス・マキナって何?
と、ルーに続けとばかりに、仲間のラジコン戦車型の自動人形達が、俺達のもとにゾロゾロと集合し始めるのだった。




