EP11 俺、死神と出遭う。
「しかし、トンでもないモノが潜んでいたもんだなぁ……。」
「うん、この辺は立ち入りが禁止された遺跡等の隠れ場所が多いみたいですわね、お姉様。だから仕方がないですわ。」
「村の地下に迷宮があるってウワサもあるみたいです!」
俺とグラーニア、それにフィンネアはエフェポスの村の喫茶店で寛いでいる。
ああ、怠けているワケじゃないぞ!
エフェポスの村のどこかに潜んでいるという不死者――次元魔術師ヴァルムント・ナイアザーを探すついでに立ち寄っただけだからな!
ちなみに、俺のもとから半径三十メートル以上離れると、そんな俺の魔力が届かなくなり、身体が腐敗し始まったり、タダの物言わぬ骸骨になってしまうゾンビのメリッサとミネル、動く骸骨のアシュトンもいたりするワケだ。
おっと、忘れていた!
一緒に喫茶店に来ているフィンネアもゾンビだったことを。
「ああ、お腹空いたなぁ……っと、さっさと〝アレ〟をあの世に連れてってチーズケーキを食べに行こう!」
と、そんな独り言をぶつぶつとつぶやく黒いフリルがいっぱついた白いワンピースに身を包む赤い髪の美少女が、ズズズズッとアイスコーヒーをすする姿が、俺の双眸に映り込む。
そういえば、俺は喫茶店にいたんだったな。
そんなワケで俺達以外にも客の姿がちらほらと――。
しかし、あのコはここら辺でも見ない面構えだ。
旅行者かな!?
だとしたら厄介の時にやって来たかもしれないなぁ。
「ちっちゃな兎獣人ばっかりいるなぁ、ここ……っと、どうでもいいけど、〝アレ〟はどこに潜んでいるんだろう?」
「あ、見つけた! カロンちゃん、ここにいたのかー!」
「まったくのんびりしすぎだよ! あ、私もアイスコーヒーを飲むぅ!」
さて、赤い髪の美少女の名前はカロンというようだ。
で、蝙蝠のような黒い翼が生えた悪魔のような小妖精と白鳥のような純白の翼が生えた天使のような小妖精を引き連れている。
ちなみに、前者は女性型で後者は男性型である。
が、後者はオカマとかオネエとか、そんな感じなので男女の中間ってところかな?
「カロンちゃん、ここにマジでいるの? 五百年モノの地縛霊のような奴が――。」
「アレは地縛霊なんかじゃないわ。〝実体〟を持っている系の不死者だしね。」
「ま、とにかく、アレをあの世送りにすれば、高得点間違いなしね!」
五百年モノの地縛霊? 実体を持っている系の不死者? それにあの世に送れば高得点間違いなし? 何を言っているんだ、コイツら?
「ねえ、そこのお姉さん達!」
「な、何? 何かよう?」
「大した用事じゃないよ。ここら辺で一番有名な古代遺跡がどこにあるか知りたくてさ。」
「ここら辺で一番有名な古代遺跡? それなら、村の北に行ってみなよ。確か、あの聖ヴァルレーゼが殉教した古代の円形劇場がある筈だ。」
「ありがとう! じゃあ、早速、行ってみるかぁ!」
「あ、待ってよ、カロンちゃん!」
「ふう、上手い具合に〝アレ〟がいればいいんだけどねぇ……っと、お代をここに置いておくわよ、店員さん。」
カロンとかいう赤い髪の美少女が話しかけてくる。
で、この辺で一番有名な古代遺跡の場所がどこかと訊いてくるので、その場所をフィンネアが教えると、ドタバタと忙しなくふたりの小妖精とともに俺達の目の前から立ち去るのだった。
「なんだったんだ、アイツらは……。」
「さ、さあ?」
「多分、死神の鎌のメンバーかもね!」
「わ、フィンクス! アンタ、いつの間に!」
あのコは死神の鎌のメンバー!?
と、そう語りながらアイスコーヒーをすするフィンネアの叔父様ことフィンクスの姿が、いつの間にか俺の隣に!?
ちょ、気配をまったく感じなかったんですけど……ぶ、不気味だなぁ、まったく!
「で、死神の鎌とは、どんな連中なんだ?」
「お姉様、アイツらは主に実体を持たない系の不死者をあの世送りにする連中よ。」
「実体を持たない系の不死者? 幽霊の類いをあの世送りにするのか? なんだ、死神そのモノのような組織じゃないか。」
「そんな感じのお仕事をしていますね。あの組織に属する兄は――。」
「え、兄!? あのフォンソスって男か!」
「ヒャッホオオオオ! ボクのことを呼んだかぁぁぁい?」
「うひゃわああ、なんでテーブルの下にいるんだ! こ、この野郎!」
「ぐ、ぐひゃっ!」
死神の神とかいう連中は、本物の死神のような仕事をしているのか……え、フィンネアの兄であるフィンソスとかいう狂人が、そのメンバーだって!?
で、奴の名前を口ににした途端、俺達がいる席のテーブルの下から、ヌゥッ――とウワサをしたら影とばかりにフィンソスが現れる……う、薄気味の悪い奴だ!




