EP2 俺、歌姫と出逢う。その2
登場人物紹介
・フレイヤ――ヤンキーな歌姫。
「「「…………」」」
「ん、どうしたん? 急に黙りこくっちまったが……。」
「あ、ああ、なんでもない、なんでも……。」
「そ、そうっす! なんでもないっす!」
「…………」
ふむ、エフェポスの村に住んでいるフレイヤって歌姫が、マーテル王国の歴代の王や王妃など王族関係者が永久の眠りにつく墓所――通称、王家の墓を荒らし容疑者として疑われているワケね。
あの~もしもし、真犯人的存在は、ここにいるぞー!
と、一瞬、言いたくなったけど、海底の砂の中に潜っている貝のように、口を紡がなきゃな。
公にすると厄介なことなるだろうし……。
「さて、ここに長居すると面倒事に発展するかもしれん。私としては、ソイツはゴメンだ。ブラッデュガーベラのエキス、浮遊樹の根っこを――。」
「う、うむ、そうだなぁ……。」
と、ブックスが言う――確かに、ここに長居すると面倒事に発展しそうだ。
さっさと、そんなブックスの30ページに載っていた三つの代物――ブラッディガーベラのエキス、浮遊樹の根っこ、雷鳴草の花を買って、さっさとアジトへ戻ろう!
「やれやれ、どこのどいつだのせいだ、まったく! 俺は犯人じゃねえっつうの!」
「ん、ウエディングドレスを着た人間の女がやって来たぞ。」
「アイツがフレイヤだ。兎天原で一番、美しい人間と言われているらしいぜ。」
「ああ、すげえ美人だけど、態度が真逆って感じだなぁ……。」
うわぁ、ちょっと痛い人かも!
場違いな感じがする純白のウエディングドレスのような衣装を身につけた金髪碧眼の若い女が、数匹の猫獣人を連れてやって来る。
へえ、あの女は兎天原の住む人間の中で、もっとも美しいとウワサされるフレイヤって女のようだ。
その容姿は美の女神が顕現したかのように妖しく美しく、そして王侯貴族の女性のように気品に溢れており、思わずうっとりと見惚れてしまいほどだ。
だけど、そんな美の女神の化身と言っても過言じゃない容姿を台無しにしている。
何せ、物腰はまるで街の路地裏に巣食う不良少年とか不良少女といったアウトローな感じだし……。
「お、ハニエルじゃん! 俺がひっでぇ目に遭ってるのを知って慰めに来てくれたのかぁ?」
「う、うぶ、苦しいィィ! も……もきゅっ……ガクンッ!」
フレイヤという名前の不良娘は、ガッと兄貴に両耳を右手で鷲掴みにすると、ムギュウウと無駄にでかい胸で、そんな兄貴の顔面を押しつけるかたちで抱擁を……あらら、兄貴が気絶しちゃった。




