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もはや無礼を通り越して、ただただ純粋に怖い

街頭が点々と存在して道を照らしてはいるものの、車がぎりぎり二台通れるくらいの道幅では両サイドに街頭が置かれるわけもなく、暗闇は所々に存在している。おそらくはその数か所にある闇に紛れ込んでいた。


幸の動きに合わせて止まったりしているぐらいだから、狙われているのは確実。一応、選択肢としては逃げるのが最適に思われた。


あまり立ち止まっていても相手に行動させる思考を持たせてしまうだけだと思い、幸はちょうど止まった場所から二つの選択肢まで絞る。


言い訳に使われる神社に行く長階段の道と、家に帰る為の見通しの良い道の二つ。


神社に行けば裏手にある階段で反対の道へ出ることもでき、それに蛇行が一切ない直線の階段で同時期に登れば相手の姿が丸見え、自然あふれる丘を登ろうなんて暴挙に出たとしても圧倒的な距離の差が生まれる。おまけに住んでいる住所も特定されにくく、代償として遠回りになるくらいだった。


「(ほぼメリットか……)」


だが、幸が悩んでしまうような欠点もある――


バイト終わりの後での授業、疲れている状態で長階段なんて登りたいなんて考える者はいない。


だからといって、直線の帰り道を選んだとしたら――


走ればある程度の距離は空けられるが、家までつけられるのはほぼ確定してしまう。相手の足の速さ次第では部屋のカギを開けている最中にお陀仏。


「(そこまで後を付け回すこともないとは思うけどな……)」


数日前から狙われているならまだしも、ついさっき起きたスト―キングで必要以上には追いかけてくるとは考えにくい。


「(それでも問題は残るな……)」


それは曖昧な相手の動向が分からないこと。


カツアゲ程度の物取りなら素直に財布ごと渡してやっていい。だが、殺人衝動の通り魔なら、完全に防がなければいけない。


さらに加えて、住み込みのアルバイトをしていることも問題だった。


幸が思いつくような可能性にはアルバイト先のお店にも迷惑がかかってしまう場合がある。特に喫茶店なんて接客業の仕事だと、逆恨みでお客として来られた日には相手の独壇場で物事が進む。


「(考えるだけ無駄だったな)」


お店に掛かる迷惑の可能性まで考え付いたら、幸はこの場で全てを解決させるのが一番だと結論付けた。


幸は階段に向いていた体を追跡者の方向に向ける。


「誰だか知らないが、姿を見せろ。小銭で良いならくれてやる」


さっきまではなかった選択に三つめを付け加えた。


風が起こす音の中での声は際立って響いていく。


「………………」


少しの時間が流れ、それでも姿を見せる気は無いようだ。声を掛けた方向からはなんの音沙汰もない。


まだまだ冷たい風に当たり続けた所為で幸の身体は身震いを起こす。それでもヘタに動けないために、少し待ってみる。


思案している内に逃げたなら、これほど楽な事は無い。


あと数分待っても出てこなかったらいなくなったと判断できる。偶然の結果で幸に狙いを定めたとしたら、気づかれた相手を必用に追い掛け回す理由はないからだ。

だが、逆に必然的だった場合。それはもうどうしようもないし、それこそ逃げるだけ無駄だ。幸の住処に厳重なセキュリティはない。


限りある可能性を幸が考えている最中、期待する希望は突然裏切られた。


「あの、すみません」


「――なっ」


予期せぬ危機に幸は驚いて声を出すと同時、警戒していた方向とは反対側から声を掛けられて、意思とは別に体も跳ね上がる。


後ろに飛び避け、幸は声の主との距離を離した。


幸がその正体を確認して少女だと分かるも、ストーキングの相手とは別の存在だとは思えなかった。気配なんて曖昧なものに自信があるわけでもない幸だったが、後ろから足音もなく近づいてくる怪しい人格の持ち主が両側から来ていたとすれば、もうそれはホラーだ。だから、声を出して驚いてしまったことは人としてどうすることもできない。


それなのに幸が驚いて心拍数を上げている最中、なぜか驚かせたその少女までもが驚いて慌てふためいている。


帰り道の少ない街灯で照らし出される中学生か高校生くらいの姿をした少女。その目に映る少女に幸は見覚えがあった。


つい数時間前に学校いた少女だ。


「校庭にいた……」


関係ないと思っていた休憩時間の出来事を確認するように幸は呟く。


「あ、はい! お気づきになられていましたか? それで突然なんですが――」


そんな幸の確認を嬉しそうに少女は受け取り、自身の不審な行動を説明すらしない。


そして少女はあろうことに、


「私と子供を作っていただけませんか?」


とんでもない変態な意見を述べてきた。


見た目だけの年齢ではそこまで離れていない少女。


見た目では綺麗な分類に入る少女。


そんな少女に――、



「は?」


幸は、若干怒りが含まれる一言しか返せなかった。


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