もふもふ少女と友達
私は人間ではありません。狸と人間のハーフのお母さんと人間のお父さんから生まれた狸人間です。
普段は人間の姿だけど気を緩めすぎたり、強く驚いたりすると狸の耳と狸の尻尾が露見しちゃう。
なろうと思えば完全に狸の姿にもなれたりもする。
今まで秘密にしていたこの事実は数日前にある人に知られてしまった。
ある人というのは一つ上の先輩、同じ美化委員の和樹先輩。
知られたからには仕方ない。少し……いや、かなり迷ったけれど私は先輩に全てを、狸の姿を見せた。
見せれば距離を置かれると思っていたのだが……
「かなみさん、おはよう」
「おはようございます」
寧ろ距離が近くなったように感じる。でも……
「先輩、呼び捨てでいいですってば」
先輩はさん付けをやめない。何を遠慮しているのだろう。私は呼び捨ての方がいいのに……この件はそのうちしっかりと話さなければ。
先輩とは元々仲の良い方だったと思うけれど、今では更に親しくなれた気がする。
私がいうのもおかしいけど……先輩後輩の関係から友達にグレードアップしたような感じかな。
今まで先輩後輩の関係だったのは……たぶん私のせいだ。
先輩と別れて自分の教室に入っていつものメンバーと挨拶をして、何気ない会話で笑う。
このいつものメンバーは友達だけど……親友では無い。
もしかしたら向こうは親友と言ってくれるかもしれないけど、第三者から見ても親友かもしれないけど、私は彼女らを胸を張って親友だと言えない。
彼女らを親友と言えない、前まで和樹先輩と先輩後輩の関係だったのは……やはり隠し事をしているという負い目だろうか。
そういう意味では彼女らより先輩といる方が心地よいかもしれない……
「そだ、かなちゃん」
友達の一人が私を肘でつついた
「あの先輩とどういう関係なの?」
「えっ……」
和樹先輩の事だろう
「中々にいい雰囲気じゃない? かなちゃんとあの先輩」
他の友達もその会話に乗ってくる。
「ぶっちゃけどうなのよ」
私は少し考えて……少し俯いて答えた
「友達……かな」
彼女らは残念そうな声を出していたけれど、私はそう言えた事がとても嬉しかった。
そう、私と先輩の関係は、グレードアップしたのだ。