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もふもふ少女の辛い顔

 秋休みが終わって数週間後にえぞきちさんは眠りについた。

 他の化狸と同じように最後は狸の姿で眠ったらしい。

 日曜日。生前のえぞきちさんの言葉もあり、あの時遊んだメンバーも葬式に呼ばれた。

 森の奥深く。車がギリギリ通れる場所で行われるらしい。

 明里さんの運転するから降りると目の前に古めの公民館のような施設があった。

「ここですか?」

 明里さんが窓を開けて前の車の仁斗さんに聞く。

「ああ、ご苦労様」

 仁斗さん達に続いて俺たちも施設に入る。

 中に入ると一匹の狸が手を上げた

「お、みやちゃんにかなみちゃ……人間!?」

 その狸の叫びに皆が驚いて施設が煙に包まれる。

 煙が晴れ、皆が人間の姿になったところで仁斗さんが口を開いた。

「大丈夫だって。聞いてないか? えぞきち爺さんと遊んだ……」

「ああ、その子達か」

 皆が安心したように狸姿に戻る。

「とりあえず入ろうか」

 煙が無くなったところで仁斗さんが言った。


 *


 葬式、と言っても人間の物とは違うらしい。

『狸ならば型に囚われず自由に生きろ』それがえぞきちさんのモットーだった事を踏まえてえぞきちさんの葬式は行われた。

 お経などの宗教的な物はせず、自由に皆がえぞきちさんに声をかけるという物だ。

 そしてある時間になると土葬をするらしい。

「えぞきち師匠の化術は俺たちが守ります!」

「押忍!」

 やけに熱い……えぞきちさんの弟子に続いて仁斗さんたちがえぞきちさんに話しかける。続いて俺たち。

 遺影は狸姿と人間姿の二つ。どちらも笑顔で写っていた。

 棺桶を模した木の箱の中に一匹の狸、えぞきちさんが眠っている。

 手を合わせて目を閉じて他の人に聞こえないくらいの声で呟く。

「えぞきちさん……今日は任せてください」

 顔を上げて戻る。途中かなみさんの顔をチラリと見た。

「…………」

 泣いてはいない。しかし辛そうな顔だ。

「あの二人の事はどうにかします。今回だけは……姉貴と協力……しても……いい、かな」

 後ろで伸二がそう言って立ち上がる。何の話だ?

 次に由美さんと明里さんが挨拶を済ませ、自由な時間となった。

「……大丈夫?」

 かなみさんの横に立って聞いてみる。

「はい、大丈夫です」

 大丈夫じゃ無い、今にも泣き出しそうな顔だ。

 どうすればかなみさんが我慢せずにいられるのか。そもそもかなみさんは何でそんなに我慢するんだ?

 考えているとかなみさんが服の裾を掴んできた。

「その……もう一回おじいちゃんの所に行ってきます」

「ん、わかった」

 えぞきちさんの前に行くかなみさん。荷物が邪魔そうだな……

 かなみさんに追いついて話しかける。

「荷物持つ……」

 振り向いたかなみさんの目から涙が落ちた。

「かなみさん……」

 かなみさんは気づいてすぐに涙を拭う。

「と、止めなきゃ」

「そんな、無理に……」

 そこで言葉が途切る。えぞきちさんの言っていた通りだ。かなみさんは涙を堪えようとしている。

 ならば、その訳を聞かなければ。

「……何でそんなに我慢してるの?」

 荷物を持って聞くとかなみさんは涙声で話し始めた。

「私が泣くと……おじいちゃんは私より悲しそうな顔をするんです。だから……」

 えぞきちさんを悲しませたく無い。そう言いたいのだろう。

「でも……限界じゃない?」

 かなみさんの頭に手を置く。

「あんま我慢するな」

 頭を数回叩くと堪えていたであろう涙が落ちはじめた。

「ダメ……なのに……」

 それでも我慢しようとするかなみさん。

「……あ」

 ふと視界に入ったえぞきちさんの写真が悲しそうな顔をしている。そんな風に錯覚した。

 そして辛そうな顔のかなみさん。

 全く……いつまでもそんな顔をして……

 考えるより先に、体が動いた。

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