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もふもふ少女のお爺ちゃん

「ここって何が釣れるの?」

 かなみさんの質問にえぞきちさんが餌を準備しながら

「知らんよ、ワシ魚はあまり知らないから」

「え……」

 その気合いの入った釣りスタイルはなんなんだ……

 ともかく釣りが始まった。


 箱の中で餌となる虫がうねうねと動いている。

「かなみさん、虫とか平気なの?」

「はい、お爺ちゃんの家が山なのでこういう虫は何ともないです」

「そっか」

 俺は少し苦手なのだが……バレないようにしないと。

 そんな事を考えているとかなみさんが言いにくそうに切り出した。

「その、こういうの平気な女子って……世間的に変ですかね?」

「いや、いいと思うよ。 世間的にはわからないけど、俺は問題無いと思う」

「そ、そうですか……じゃあ、良かったです」

「そう……なの?」

 驚いてかなみさんを見ると顔が赤くなってるように見える。顔が熱い。

「はい、先輩が大丈夫ならいいです」

「そっか……」

 なんとなく気まずい沈黙が少し続いた時、えぞきちさんがいた方から煙が上がった。

「ん?」

 煙に包まれているのはえぞきちさん。煙が晴れると狸姿になっていた。

「どうしたの? おじいちゃん」

「ん? いや、少し立ちくらみがな」

「大丈夫?」

「問題無いよ。見てなされ」

 狸姿のえぞきちさんはそう言ってくるりと回る。煙が上がってえぞきちさんが人間姿になる。

「な? この通り化術も問題無い」

「……みたいだね」

 かなみさんは心配そうにしながらも元の場所に戻っていく。

 こっちを見ていた伸二たち三人もそれぞれ釣りの作業に戻る。

「……ん?」

 疑問を感じた俺は伸二に近づいた。

「なあ伸二、明里さんは知ってたのか?」

 見たところそんなに驚いた様子は無い。

「ああ、姉貴は知ってるみたいだ。何故かはわからんがな……」

「そ、そうか」

 明里さんの名前を出した瞬間伸二の目が死んだ。この話題はもうやめよう。

 伸二から離れてえぞきちさんの隣に座る。

「大丈夫ですか?」

「ん、今日はなんとも無いじゃろな」

「今日は……?」

「わかるんじゃよ。野性的な直感というか……己の死期は、な」

 驚いて言葉を失う。

「聞いていたんじゃろ? 和樹くん」

 えぞきちさんから質問されてようやく口を開く

「その……はい、すいません」

「謝る必要は無い。和樹くんには話そうと思っていたし」

「えっ……」

 えぞきちさんはかなみさんをちらりと見る

「ワシはな、かなみの涙を見るのが何よりも一番嫌なんじゃよ」

 だからね、とえぞきちさんは俺をまっすぐ見る

「かなみの事を、頼んだよ」

「えっ……」

「一生を頼むってわけじゃないさ、それは和樹くん達が決める事だし」

 えぞきちさんは目を閉じて竿を引く。小ぶりの魚が宙を舞う。

「ただ、ワシの葬式の時は……かなみを頼む」

「そんな!」

「こればかりは避けようが無い。人間に化けすぎた狸の宿命じゃよ」

 えぞきちさんは釣った魚をバケツに入れる。

「かなみはワシの前だと泣くのを我慢すると思う……だから、思いっきり泣かせてやってくれ」

 えぞきちさんはそこまで言うと弱々しく笑って

「かなみの泣き顔なんて見ないのが一番だけど、ね」

 と、竿を振った。

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