もふもふ少女は犬嫌い
先程から俺と会話している獣耳少女、名前は野代かなみ。
髪型はショートカット、目は大きめで全体的にフワッとした雰囲気を持った一つ下の後輩でもうすぐ高校二年生になる。
とりあえずこの状態になった経緯を話そうと思う。
彼女と美化委員の仕事である校内清掃をしていた時の事である。
校舎の裏のゴミを拾っていると一匹の犬がいた。首輪があったので何処からか紛れ込んで来たのだろう。
可愛い小型犬だったのだが野代さんは
「私犬苦手です……」
と、俺の後ろに隠れてしまった。
「よし、俺に任せろ」
先輩らしく犬を捕まえようとした俺だったが流石小型犬、するりとすり抜けてしまった。
すり抜けた犬はそのまま野代さんに突撃。
「きゃあ! 犬! 犬!?」
犬を追い払って彼女を起こす。起き上がった彼女を見て俺は言葉を失った。
「え……」
起き上がった彼女に獣耳と獣尻尾が生えていたのだ。
回想、終。
野代さんはスカートについた土をはらって
「わかりました、全部話しますよ」
と少し膨れっ面になった。
「お、おう」
俺の返事を聞いて彼女は口を開く
「私は人間じゃないんです、狸と人間のハーフです」
「……は?」
人間と狸のハーフ? わけがわからない
「正確には人間と狸のハーフであるお母さんと人間のお父さんの間に生まれたクォーターです」
「えっと……」
整理しよう。つまり彼女は人間では無く、単純に考えて四分の三が人間で残りの四分の一が狸って事か?
纏めた考えを伝えると彼女は頷いた
「はい、そんな感じです」
「でも……」
開きかけた口を彼女の手が押さえた
「先輩、お願いです。 絶対に誰にも言わないでください!」
俺は口から手を離す。あー、ドキドキした。
「わかった、言わないよ」
「絶対ですよ!」
「わかってるから」
まだ頭が混乱している。
とりあえず、だ。
俺はいつの間にか落としていた火バサミを拾って言った。
「とりあえずゴミ拾いしよっか」