運動会に参加するというツアーの体験記の様なものですよ
昨年9月、運動会に行って来ました。個人的にその時の話が聞きたいとリクエストを受けたので、体験記にまとめてみました。
運動会って、最後にやったの何時でしょう。
そう言われても、現在学生の方はぴんとこないでしょう。お子さんがいらっしゃて、お弁当とカメラポジションの争いを繰り広げられている方にとっても、大変さが第一かもしれません。
地域や会社で運動会を開催しているってところもあるでしょうかね。
でも、そういった機会の無い私にとっては、休日通りかかったグラウンドで『天国と地獄』なんかを耳にする程度の関わりしか無いわけです。
そんな事を考えたのは、某フリーペーパーで『運動会の助っ人に行きませんか?』という企画の記事を読んだからでした。
正確には「なんか変わった企画やってるなぁ」と思いつつ記事を読んだ一年後、『今年もやります! 参加者募集!』という記事に「あぁ、そういえば去年そんな事思ったなぁ」と思ったわけです。一年経っても気になっているんなら、私やってみたいんだろうな~と、ポチっと申し込みボタンをクリックしました。
ツアーの行き先は、山梨県芦川地区。
とりあえず、ツアーの注意事項に驚きました。『携帯は圏外です』『夜間気温は10℃を下回ります。防寒具を』因みに9月の事です。都内は半袖でも良い時期でした。
軽く戦慄を覚えながら、当日を迎えました。
早めに向かった集合場所では『山梨観光推進機構』の Iさんがボードを持っていらしゃいました。もう一人女性の参加者の姿もあります。2日間よろしくお願いします。
「すみません、これ少し持っていて下さい!」え?
ボードを手渡し、機構の Iさん走り去る。残されてキョトーン。え? いえ、私たち参加者ですのでっ! スタッフじゃないんですっ!その後来る人に繰り返すことに。
Iさんも戻って来ましたし、バスに乗ってしまいましょう。
……バスのツアーの集合場所って、色んな会社入り乱れてバスまみれになりますよね。……うん、追い出されるようにバスが進みます。……進みます。……うん、集合場所から大分離れましたね。
先ほどのやり取りから見ても、山梨からの主宰側のスタッフはIさんお一人の様子。……窓の外では、全力ダッシュ中の Iさんの姿。「すみません、後お一人が来ません!」バスに一言叫び再び外に。また走るの!? うわあぁ Iさんそんな急がなくてもっ……集合場所とバスをダッシュ往復する Iさんの姿に、「一人運動会なう」という呟きが漏れました。
因みにフリーペーパーの編集部の方も一名遅刻だと、編集長のW氏が挨拶で仰っておりました。後からレンタカーで追いかけて来ましたよ。寝坊だそうです。私も4時半起きでした。眠いです。ぐぅ。
バスは河口湖ICから河口湖大橋を渡り芦川地区に入ります。
農作物直売所の駐車場でマイクロバス二台に乗り換えます。この先の道は大型では入れないとのこと。
携帯を見てみると、いつの間にか圏外です。アンテナが消えています。
グラウンドでは、雲ひとつない真っ青な空に万国旗が翻っていました。
運動会は中盤です。移動時間の関係もあって私たちは、昼少し前からの参戦となりました。上芦川、中芦川、鶯宿、新井原の4区域チームにそれぞれ『助っ人』として均等に分かれます。
初めて顔を合わせたチームの方たち。私、結構人見知りする質なのですが、『運動会』って意外にも楽でしたよ。何分、チーム一丸で勝利! という目的がはっきりしているので、コミュニケーション取るのに初めから取っ掛かりがあるのですもの。
新井原チームの陣営に座って5分。おばあちゃんたちにトイレットペーパー貰いました。
暑いだろうってスポーツドリンクくれました。
飴ちゃんくれました。
……『助っ人』の仕事をする前に、何だか色々もらっています。どうしよう。運動会にエコバッグ必要だとは思わなかったよ。
午前最後の演目は、保育園のお遊戯。参加者募集のアナウンスが響きます。……園児一名ですかっ! これは『助っ人』の出番ですねっ!にぎやかしも必要不可欠っ! 踊りは真似して合わせろって事ですねっ! ぶっつけ本番上等です。
地域の小学生も全部で12名。地域だけではなく小学校とも合同の運動会のようです。過疎が深刻で、こどもの数は絶対的に少ないとのこと。地域の親睦だけではなく、運動会はこどもたちの為もあるのかもしれません。競う相手がいない運動会は楽しくないですものね。
お昼ご飯はお弁当。またペットボトルが増えました。
おばあちゃんたちが味噌汁と手作りたくあん差し入れてくれました。みんなでポリポリします。醤油漬け旨。
午後の部開始。綱引きです。あれって凄い全身運動なんですね。小学校以来なものでちょっとびっくりしました。
ゼイゼイ言いながら、心の隅で「勝ち進んだら、また、これをやるのか……?」と思う運動不足の都会人たち。心が折れました。
新井原は、他に比べても高齢化が進んでいる地域とのこと。もう既におばあちゃんたちは観戦オンリーモードです。「全員参加です、皆さんグラウンドに出て下さい」ってアナウンスもガン無視してます。それゆえ『助っ人』は全ての種目に参戦です。出場の度に参加賞貰います。どうしよう一泊だからって鞄そんな大きくないんですけど。入る気がしない。
あまりパッとしない我が新井原『助っ人』軍団。だが、とうとう面目躍如のチャンスがやって来ました! ムカデ競争です! 「イチ、ニ! イチ、ニ!」なんとトップで繋ぎます。このまま行けーっ! 頑張れっ! イケるっ!
と、思った、最後の走者。
「ハッ!ハッ! ハッ! ハッ!」
なんか掛け声から違いますー…地元中学生チーム……
お前ら、絶対練習してやがったなーーーっ!!
いい年した大人たちの、大人気ない絶叫を後に、中学生たちはダントツのスピードでトップでゴールテープをきりました。
結果、二位(泣)
フォークダンスが思い出せない位久しぶり過ぎて、踊れた時には曲が終わりました。
運動会結果発表は一位中芦川、二位上芦川、鶯宿と新井原は同点で三位です。単独最下位でなくて良かった。
片付けの手伝い迄が『助っ人』のお仕事です。
マイクロバスで移動して、BBQ会場のお店に移動です。
焚き火って何か良いですよね。
ツアーの参加者だけでなく、運動会に来ていた芦川の皆さんも参加しています。大きな鉄板で焼かれているのは、地元産の肉と野菜。外で食べるご飯って、なおのこと美味しいですよね。ビールも旨いが、一升瓶ワインも色々試したいですよね!
お酒も入っての交流会です。同じチームだったNさんの上司がW編集長のご友人だったとのことから、近くで色々な話を伺う機会に恵まれました。他にも韓国からの留学生のYさんや、ご夫婦で来ていたN夫妻など……普段の生活では職種も立場も、生活区域も異なる人たちです。
様々な立場の方たちとの交流ということ自体が、自分の見識を広げる、非常に大きい価値ある機会なのだと感じ入りました。
こんなぶっ飛んだ企画でもなければ、これだけ多様な人は集まらないでしょう。だが、皆さん『運動会したい』という目的は一緒なのです。何だか不思議で、素敵な時間です。
酔っぱらってますけどね。あ、手羽先下さい。
日帰り温泉施設に移動して本日の疲れと汗を流します。
風呂上がりには、瓶牛乳でしょう! ……何故自販機からコーヒー牛乳が出てきたのですかね……まぁ良いか。飲んじゃいますけど。
本日の宿泊は学生の合宿などに利用される施設とのことです。どうしよう。何かこの感じが無性に懐かしい。修学旅行より移動教室的感じです。
勿論、携帯は圏外のままです。文明の利器など無力であります。
夜です。
キャンプファイアーの時間です。
こどもとは違う、大人のキャンプファイアーです。勿論ワインが並びます。うわぁい。飲み放題だぁ。
ツアー参加要項には、"成人に限る" って書いてありましたが、"(飲んべえに限る)" も必要だったんじゃないですか編集長? お酒嫌いじゃない私もきっつくなってきましたよ?
並ぶおつまみは、地元の方の手作りです。BBQもそうでしたが、地元の農作物のアピールも兼ねて、地元産に拘られています。ワインも勿論そうです。
何だか思っていた以上の、もてなされぶりです。
……火って、マシュマロ焼きたくなるものみたいですよ。熱ぃっ!
火が消えた後も建物の中で、懇親会という名の二次会は続きます。
私は限界です。寝ます。おやすみなさい。
朝ご飯は昨日バスを乗り換えた農作物直売所でです。
荷物を持ってバスに乗ります。……出発、しませんね? そういえば前席の Nご夫婦はどうしたんでしょう? え? 朝、旦那さんがスリッパで外に出掛けようとしていたんですか? へぇ……
バスに荷物を置いた奥さんの顔色が悪いです。「……見付からない」へ?
とりあえず奥さんを置いて、残りのメンバーは朝ご飯です。
食事中。「見つかった」とのこと。事の次第を伺えば、昨夜懇親会迄参加されて、たっぷりワインを楽しんだ N旦那さん、二日酔いどころか泥酔のままで朝を迎えたご様子。そのままふらっと、外に散歩に出られたようでした。そしてそのまま行方不明に。
前述した通り携帯は圏外です。行方不明の旦那さんを奥さんとスタッフで探し回り、見つけた時には、外でゴロン、ぐぅ。していたそうです。
お酒怖い。……でもきっと、後の奥さんのお説教はもっと怖い。
この後は、古民家やこの地域特有の石垣や『兜造り』の屋根の残るのどかな景色の中を散策です。地元の名物ガイドの楽しい案内付きです。昨晩のキャンプファイアーの最中もこのお二人は場を盛り上げて下さいました。本当に楽しかった!
昼食は、ほうとう作り体験です。
……何か改めて書いてみると、盛りだくさんのツアーですよね。
捏ねて捏ねて……W編集長本職のようですね。負けませんよ。男性がいると楽ですと? 関係ありませんよ。
……何への対抗心でしょうか。
生地はビニル袋に入れてしばらく寝かせます。……この時間を利用して、元帝国ホテル勤務だったという地元『百姓ソムリエ』さんによる、ワインセミナーです。
はい、また飲みますよ! まだ飲みますよ!
2テーブル8名に付き、ワインが4本置かれます! 多いな!
始めはちゃんと聞いていました。グラスの持ち方からワインを楽しむ方法。トリビアも挟まれ、甲州ワインについても学びました。ちょっと格好いい事なんかも教わりましたよ。
……でも、ね。飲んでいるわけです。昨日から一緒の気の良い皆さんと。
そんな中飲んでいると……途中から、セミナーって何だっけって感じに……
ワインおいしーですね!
こんな状態で生地伸ばして、包丁握りますよ。ちょっとほうとうの事忘れてましたよ。大鍋で全部まとめて煮込んで、卓を出して実食です。再び残ったワインが出てきたよ!
ほうとう美味しいですねぇ。野菜も味噌もやっぱり地元産です。美味しいです。でも、飲み過ぎて何だかなぁになっています。
農作物直売所で買い物したりして、すべての行程は終了です。
『山のきのこ』と書かれた、真っ赤なカサのきのこは手を出す度胸がありませんでした。
帰りのバスではぐっすりですよ。
芦川は、過半数が高齢者の『限界集落』と呼ばれる状態の地区なのだそうです。
自分たちのこの芦川を、このまま廃れさせていかせたくはない。と、訴えてきた芦川の皆様の姿に感銘を受け、この企画に賛同したのだと W編集長は仰っておりました。
「このツアーで、芦川って良いところだな、と思われたのであれば、皆さん各自それを発信して下さい」
私、基本的に、ネット上などでは特定の地名などを明記しないのですが、この文章に限って『芦川』を明記していたのは、それが理由です。
草の根活動であっても、ちょっとだけでも、この楽しい場所の記憶と私たちの応援が伝われば素敵です。
また、来ますね!
そう言った言葉をそろそろ実行に移したいと思います。
『芦川』は、この時期、鈴蘭が綺麗なはずですから。