第四話
展開早過ぎますが、次の次くらいで落ち着きます。
ゴブリンを敵討伐後は、村から離れ過ぎない様に、近くを探索し始めた。
探索は意外に快適に進んだ。
「この辺りで水の反応を感じる」
「あれか?」
遠くで水飛沫の音がした。そこには滝と川が流れている。
「ここの水は安全か分かるか?」
「大丈夫だ。逆に栄養が多い。マグネシウムとカルシウムがバランス良く含まれている。それに不足すると筋肉痛の原因ともなりうるナトリウムもある。まるでミネラルウォーターだ」
安全を確認すると俺は手で川の水を掬い喉を潤した。
「あー生き返るー」
「俺にもその水を分けてくれると嬉しい」
「お前飲めないだろ」
飲めない等と言いながら剣を川の水に潜らせてみた。
「ほい。ま、切れ味が落ちただけだと思うけど……な?」
水に剣を潜らせると剣は青く神秘的な光を纏った。
「なっ……」
「我はポセイドン」
「はあ」
「我は水を司る神」
「はあ」
「我は汝の剣に疑問を持った」
「はあ」
「何故汝はその様な剣を持つ資格があるのだ?」
「はあ!?」
「汝に聞いているのだが」
「資格ってなぁ……んー強いからだな(この剣が)」
「汝は強い。偽りを本当かの様に話す」
「さっきからアンタは失礼じゃないか?」
「我は水の神だ」
「うっ……」
「異論は無いか?」
「無い」
「安心した。冒険を続けるが良い」
ポセイドンと名乗る者はもう話さない。
勿論姿は無く、まるでその時だけマキが身体を乗っ取られた様だった。
「それにしても態度がふんぞり返ってたな」
「しかしあの者が話していることに偽りは無い」
「お前も真似するな! しかも聞いてたのかよ!」
見ると剣は元通りの銀色に戻っている。
「聞いてはいたが、意識が極限まで薄くなっていた」
「そうか。もう一度会う事は出来るのかな」
答えが返って来る前に、俺は剣を水に潜らせた。
変化は無い。
「分からない」
マキにも俺にもサッパリだった。その後数時間、話をしながら歩き回ったが、ゴブリンの姿も、村も見つからなかった為、村に戻る事にした。
「今日も疲れたな」
普段外出は最低限の人間が、毎日の様に森を歩き回れば疲れるに決まっている。
「なに!?」
木で出来た門が消えていた。門が無くなれば見える筈の木造住宅も消えていた。つまり、村が丸ごと消えていた。
「お前か。俺達の世界を破壊していたのは」
目の前にはフードで顔を隠した男が立っていた。
「ーーッ」
もがく時間も与えてくれなかった。僅か数秒の間に目隠しをされ、手足を縛られた。
何処かの建物に入ると、目隠しと足の縄を外された。剣は没収された様だ。
「コイツだ。一つの村を占領し、ゴブリンを虐殺、挙げ句の果てに試作型のアイツも殺したクズです」
「おお、仕事が速い。一応事態の把握を済ませるまで牢へ」
え、牢かよ。
俺はまた目隠しをされて、何処かの牢屋へぶち込まれた。恐らく牢屋までの道のりを覚えられない様に目隠しをされた様だ。
幸いな事に、目隠しや縄は牢屋で全て外された。
「おお、新入りか」
「誰?」
俺が牢に入ると、横の部屋から声が聞こえて来た。
「これで三人目。俺はゾーイ。お前の正面で爆睡してるのがピース」
「俺はマキです。よろしく」
「ああ。お前、何でここに来た」
ゾーイは失礼無視で聞いて来た。
「いやぁ、ゴブリン斬ってたら捕まりましてね」
俺は頭を掻きながらそう返事すると、呆れ顔で、「ここの研究所ではゴブリンが資金源と言っても良いからなぁ」と呟いていた。
「ここは研究所なんですか?」
「知らなかったのかよ!?」
「あ、はい。俺ここで目が覚めたんで」
「……お前は色々な事情があったみたいだな。これ以上話を聞くとこっちの頭も狂っちまうかも知れねぇな。俺はこの研究所の金を盗みに入ったゴロツキだが、ここに金は無いとか言われてここにぶち込まれたんだ」
「ああそうなんですか。ここで一体なんの研究をしてるんでしょう」
「ここはな、お前が目を覚ました場所を巡回しながら研究をしているんだ」
「あの森の木、街、ゴブリン全てがVRで出来ているらしいんだ」
「そりゃなんですか?」
「あの、本物みたいに何でも再現出来る……」
「あ……ああ、あれですよね。あれくらいなら知ってますよ……」
俺はポカンとした顔で訪ねたが、こっちでは有名らしい。村がまるまる消えたのもこれが原因か。
その後しばらくゾーイと話して過ごした。