第三話
現在はゴブリンの居た村を探索中。
恐らく村のどこかの倉庫か何かに食料があると、予想。
真夜中なんて事もあり、あまり外へ出歩かないのが身の為だろうが、今はそこまで頭が回らない。
「ここが、最後……。ここになければ終わりだ」
そろそろ身体も危ない。最後の住宅に足を踏み入れる。
そこには、貯蓄された肉や野菜があった。
「おい、知能があるからって食料の貯蔵も出来るのか?」
「いや、これは人がつい数日前まで居たんだろう」
この村は数日前まで人が居たのに、こんなにあっという間にゴブリンに占拠されるとは。
この肉ももしかしたら人の肉かも知れない、と言う心配は無くなった訳だが、調理法はサッパリなので、果物から頂戴する事にする。
「ふぅ、一先ずは休息が得られたな」
何でもこれは、未だ会った事のない、異世界人が採ってきた果物らしい。リンゴみたいな赤色だが、味は酸味が勝っている。いやぁ、止まらない。食って食って食いまくる。
ーー遂に芯は十個を超えた。このリンゴの様な果物にはリンゴ同様、芯がある。そのため芯の数だけ食べたと考えると恐ろしい。
今日はもう寝よう。これでもし、新たな世界の事が全て夢だったら、と考えてしまったりもする。
寝床は近くにあった家のベッドを借りさせてもらい、解決。
ーー翌日朝早くに目覚めた。
「今日も頑張って行こう!」
そう剣に語り掛けたが、返事が無い。試しに剣を手に取り、もう一度言ってみた。
「今 日 も 頑 張 ろ う」
「はっ! びっくりさせるな。剣だから何だ。剣だって寝る」
「そうかい」
果たして戦闘中にコイツが寝たらどうなるかと思うとぞっとする。華麗な剣裁きで敵を圧倒していたのに、急に能力がガタ落ちし、剣を振っても空振って地面に打ち付けられる……哀れだ。
「今日はここら周辺の探索を進めて、村を探す事にする」
「頑張れよー」
他人事らしい。まあ関係無い。ゴブリン達を抹……登用するんだ。ずば抜けて有能なのだけ。
ーー剣を担ぐだけの準備が完了した。
村から出て、周りを確認すると、草むらでガサガサ、と言う様な物音。
「まさか…………」
そのまさか。ゴブリンが群れで俺を狙っていた。意外と仲間意識は高い。
「グォッ! グモグモ……」
気持ち悪いんで殺る。
「気を抜くなよ」
「分かってる」
まずはどれ程の量の敵が居るのか。それを確認するべく、ゴブリンに挑発行為をしてみる。多分指を捻らせて仲間が寄って来たから、こっちも指を捻らせ、「こいよー」と言うジェスチャーを見事に表現。
しかし敵はイラッとした表情を見せるばかり。あれは仲間間のみでの行動か。
どうしよう、と悩んでいるとスキを突いて、ゴブリンが俺の肩に見事に投げ槍をHITさせ……る訳が無い。この雑魚ゴブリンめ、制裁を下す! なんちゃって。
来たゴブリンを斬りまくる。相手の武器が、木の槍と言うこともあって、剣に対してほぼ無力、そのため終始有利な戦いであった。
しかし最後に現れた大将の様な、一回り身体も大きいゴブリン。槍も石の素材で剣とも互角に戦えそうだ。
「おーい、その槍を捨ててくれないかい、ゴブリンさん」
「……」
「おーい」
「グゥゥゥゥゥ……」
警戒している。ズカズカと近づいて行く。流石に身の危険を感じたのか、ゴブリンの方も近接戦に持ち込もうと、槍を構え直した。
一気に勝負をつけようとしたが、あっさりと剣は槍に塞がれ、今度は向こうの攻撃に入った。意外に攻撃的で、俺の腹部を中心に狙ってくるように思える。後退りながら、槍と剣を弾かせる音が響く。
ーー勝負の結果は相手のスタミナ切れ。パタリと攻撃が収まったと思えば、逃げる様に去って行った。そこを一振り。あっさりだ。実にあっさりだ。