そして宇宙(そら)に向かうフネ
「……きれい」
その『女性』はそれだけを呟いた。
黒く、黒い闇の中、『彼女』を包む星たち。
それは地上で見るものと違い、常に優しく、強く輝いて『彼女』を包み込んでいる。
ここまで来るのに、色々あった。ここまで来たのにこれだけしか言えなかった。
「どうですか? 気分は」
地上からの質問の声に「最高」とだけ『彼女』は返した。
「こちら。ハルカナル。ハルカナル ミキ。地上。どうぞ」
「こちら地上。ミキ。どうだ。宇宙で見る夜明けは」
真っ黒な塊の脇からのぞく、最も強く、明るい光を放つ星。
彼女が産まれた時から見ていたのに。
はじめてみる力強いその星。『太陽』。
その鮮やかな輝きは、真っ黒な塊をゆっくりと白い輝きで包み、
真っ黒な塊は、青く、青く、青く輝いていく。
その塊はもう塊ではない。『彼女』が愛してやまない。『彼女』が好きなセカイ。『地球』。
「太陽がなければ、惑星は輝かない。惑星がなければ、太陽は輝けない」
とある青年の声が脳裏に浮かぶ。そうだね。私はそうやって輝ける場所にきたんだね。
『彼女たち』を乗せたフネ。『こすもす』はゆっくりと宇宙の中を進んでいく。
磁力椅子に座った美しい女性は彼女の母国語の日本語と各国語で『彼女』同様に美しく輝く、青い青い星と暖かく強く輝く命の光に感嘆の声を上げる男女に淡々と語りかけた。
「本日、お集まりくださったのは他でもありません」
凛とした声で告げるのは日本国初の女性総理。『悠里美里』
かつて、未来と朝日が助けた法学生は今や世界にその名を知られた存在になっていた。
そして、次世代のリーダーになるとも。
「これからの世界の事。資源の事。未来の事。子供たちのこと。
この場、この青い青い母なる星が見える場所で話そうではありませんか」




