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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
終章。いつかきっと輝く未来(みき)

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輝け。銀色の翼

 ゆっくりと銀の気球の気球部分が展開していく。広く、大きく、そして繊細に。

その薄い薄い金属の翼は、風無き風、宇宙の風を受けて進む。


 ソーラーセイルシステム。

探索機『はやぶさ』の事故から図らずして実験することになったこの技術は現在において日本国が開発したIKAROSによって実用化の道を開いた。

その能力を駆使し、『こすもす』はついに地球圏からの脱出すら可能としたのだ。

「相変わらず、謎の技術ですよね」妙齢の女性はそうつぶやくと『俺』の隣に。

「唯。人類はこれから、どんどん宇宙そらを目指すよ」「あはは」

ヴァーチャルリアリティのシミュレーションを終えて『俺』たちは進む。

「資源の問題もどんどん解決するはずだ」「あら。公平分配なんてこの世にはないのですよ。わが社はもっともっと儲ける必要があるのですから」「かなわねぇなあ」

こういうところは、学生時代と変わらない。

おどける彼女をじっと見ていたのだろう。不思議そうに俺を見返す彼女。

「わたくしの顔に何か?」「いや、美人だなと」「この歳になって言われましても」ははは。なにをおっしゃるうさぎさん。

「月に行くという約束もまだでしたね」「この実験が終われば月どころかもっといろいろなところに行けるさ」

おどける彼女は『俺』の腕を掴んで離さない。本当に学生のころに戻ったみたいだ。


 ばたばたと。もといどすどすという音。

「社長!」「赤松経理部長! すまん! ヒミツでちょっとやらかした!」「いい加減にしてください?! そのうち株主にやられますよ!」

ますます貫録の出てきた赤松に平謝りの『俺』に大笑いするのは赤松経理部長の妻である清水法務部長だ。本当は同姓だが社内ではややこしいのでそのままである。

「森田元技術部長の祝いの席のことなんだけど」「飯島主任。ファン……もといパイロット候補生が探していたよ」「うわ。いないといって?!」

首を振って困ったそぶりを見せる彼に微笑む『俺』たち。

『有人ソーラーセイルシステム』実験機一号のパイロット。それは、社長である私自身。社長特権を使わせてもらったが赤松がキレるのも理解できる。

でも、操縦訓練は頑張ったんだぞ。そういうと赤松の女房のほうの説教を喰らうので黙っている。

というか、新堀こと唯がマジで怖いので言わない。


「また、どこかに行ってしまう。私は待つばかり。良いですよ。そのままいっそ星のかなたまで行ってしまえばいいのです」


 そっぽを向く彼女の頬にそっと唇を落とす。

「その時は、君も連れていきたい。良いかな」

妙齢の女性となった、かつての『新堀 唯』は頬を染めて呟いた。

「こんなおばさんに言うセリフですか」「約束したぞ」

約束は、守るためにあるって朝日にいちゃんが教えてくれたしな。

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