K-THBF ZERO(小型特殊放射能防御服試作品)
かしゃ。かしゃ。
「ぼくドラ○もんです」軽快な音を立てて踊るその小さな人形は未来に向けて一礼。
その様子を見て大笑いする未来に久しぶりに帰宅した朝日が声をかけた。
「なんだその人形は」「あ。あさにい。おかえり」「お帰り」
カシャカシャと前後に進み、軽快なロボットダンスを披露する人形。
「何故に藤子不二雄」「いや、言わせてみたくて覚えさせた」まあ未来なんて子供と大差ない。
というか貧乏な二人の家なのになぜか足元にはロボット掃除機。
「また変なものを買っている」「いや、可愛んだぜ? おかげで床の上に物をおけなくなっちゃって」ロボット掃除機と言う奴はゴミ箱を置いているとゴミ箱に特攻してゴミを散らかして吸いきれずに悶えたりする厄介なヤツである。
既存の扇風機には乗り上げて非常停止するので四角いサーキュレーターのほうが使いやすいし、そもそもコード類は壁の上にまとめておかねばならない。
「というか、これは会社のものなんだ」「そろそろ会社のモノと私物を分けろよ」
呆れる朝日はそれでも慣れた手つきで珈琲豆を取り出すとフライパンで軽く煎りはじめる。
「濃いめが良いか」「朝にい。何度も何度も言うけど俺は苦いのが苦手だ」自分の好みを押し付けるな朝日。
「あのな。そろそろ『こすもす』は新堀のおじさんの子会社から独立しろって言われていてね」「へぇ」
お嬢様方から資金を募った分も買い戻さないといけない。株の価値がヤバいことになる。
「宇宙事業はまだまだだけど、ほら、『こすもすねっと』がマジでヤバい」「業績不振なのか」「いんや」
簡単に言うと恐ろしい勢いでシェアを伸ばしてしまってアルバイト禁止の神楽坂高校において大問題になる程度には騒ぎになった。
なんせ携帯、特にスマートフォンの電話代はバカ高い。
通信料金家族で年間八万円お得に! な現実世界なのに未来の『こすもすねっと』ときたら基本料無料だったりする。
また、原則電話回線を必要としない『こすもすねっと』は新堀の父の支援もあり凄まじい勢いで国内外のシェアを奪っていっている。
そのことが、後にとある計画の基本OSを生み出す力の源泉になるということをこの二人の兄妹はまだしらない。
「そっか。宇宙には行けたっていうけど」「宇宙って綺麗なんだぜ!」
精一杯見栄を張る未来だが実際はトイレから一歩も出ることが出来なかった。
当然ながらそんな景色は未来は見ていない。
一応、校則の壁もあり、未来自身は会社から給料をもらっていない。
鄭の店でのバイトはあくまで鄭の善意や好意でお金をくれたとか食べ物をおごってもらっているということにしているらしい。
「で。次はロボットなんだな。あにき」「……」
朝日の表情が微妙に変わったことに未来は気づかない。
「通信を支配し、同時に複数のロボット、家電を管理するOSが必要なんだってさ」「そ、そうか」
で、その実験を我が家でやっているということで。
そう続ける未来に「じゃ、このエロ動画は」と返答する朝日。
そこに映っているのは全裸でうろつく未来の動画。
「たぶん、掃除機からだと思うが」「むきーーーーーー?!」
パスワードは管理しようぜ。未来。
こういうくだらないハッキングは今も昔も有効であり。
「で。カメラを全部テープで覆ったってか」「いちばん手っ取り早い」
古典的な防止策は今も昔も有効である。
現実世界ではソフトバンクが格安化、囲い込みをめざしてOS開発を行っているロボット事業。
ソニーは撤退、ホンダのASIMOは一向に商業に乗らない中、各国通信、検索大手はロボットや飛行体、無人自動車。
そして家電の支配を手に入れて通信、仮想現実から現実世界にまで進出していこうとしている。
未来の『こすもすねっと』は宇宙に浮かぶ多数の子機を管理維持しているがそれを世界中の家電、ロボットを使った介護などに使えないか、また統一することで複数の機体を同時に動かすことが出来ないかを模索している最中なのだ。
この後の騒動により世界中を騒がせ逮捕され、後に条件付きで無罪になった男、『福田』と朝日との出会いは別の物語で語っているが、未来と福田は意外なところで兄より先に接点を持っていたのである。
「あのさ」「うん?」
「やっぱ、一人だとさみしいよね」「だな」
「みおっち。なんかフラれたって」「そっか。今度慰めにいってあげよう」
その台詞をきいて妙に赤い顔になり。
下着を漁りだした未来を朝日は容赦なくぶった。
この物語だと朝日さんは結構手が早い。




