とおちゃんが死んだ
「ねぇねぇ。みんななんで泣いてるの? 大地にいちゃん」
幼い『少年』を抱く彼は「星の海に誠さんが行ったからだろうな」と返事した。
「ほしのうみ? すっご~! ぼくもいく! 」
大地と呼ばれた青年は戸惑う。「無理だ」「え? 」
「いやだなぁ。とおちゃんにあいたい。ロケットに乗ったら飛べるよね? いけるよね? 」
少年はそういって笑う。
「うん。行けるよ」そういって、もう一人の少年が彼を抱き上げる。
「朝日にいちゃん! あそんでっ! あそんでっ?! 」
「いこうぜ。朝日」「ああ。大地小父ちゃん」
『ぼく』を男手ひとりで育ててくれていた『とおちゃん』は死んでしまった。
『ぼく』は、大好きな従兄弟のおにいちゃん、朝日にいちゃんと『兄弟』になった。
おじさんたちはぼくを大切に育ててくれた。
朝日にいちゃんは勉強家で賢くてカッコイイ。ぼくは勉強が苦手。
朝日にいちゃんが勉強を終わったら、蝉を一緒にとりにいく。夏休みの楽しみは蝉取り。
朝日にいちゃんは勉強して、とうだいに入るんだっていってる。
ピカピカ光ってかっこいいんだと思う。それでお医者さんになるらしい。すごい。
だけど、ある日を境に、『父さん』と『母さん』はいなくなってしまった。
『うちで暮らせよ』大地にいちゃんはそういうんだけど、ぼくらはあの家で、お父さんとお母さんを待ちたかった。
だから、断った。
朝日兄ちゃんは、大学に行かないっていって、トラックに乗るようになった。
遊んでくれないのは寂しいけど、いつまでも甘えているわけにはいかないよね。
『とおちゃん』。父さん。母さん。ぼくたちは元気だよ。




