成層圏って宇宙じゃないの?
成層圏(せいそうけん、stratosphere)とは、地球の大気の鉛直構造において対流圏と中間圏の間に位置する。対流圏と成層圏との境目は対流圏界面(高度は極地で約8km、緯度が低くなるに従って高くなり赤道付近で約17km)、成層圏と中間圏との境目は成層圏界面(高度約50km)と呼ばれる。
(ウィキペディア日本語版より)
「宇宙をもし目指したらっ! 超目立てるっ! 部員も増えると思うのっ?! 」
和代は必死で逃げようとしているが、
合気道二段の新堀と『なぜか』寝技が異常に上手い潤子の二人に首と腕。
そして両脚を極められて動くことができない。
「で、どうするの? どうするの? みっちゃん? 」
和代に変形四の字固め。『ロータリー・デスロック』を華麗に極めた潤子がうれしそうに問う。
「わたくしも興味があります」
爽やかに微笑む新堀だが、その美脚は和代の首を締め上げ、同時に腕拉ぎ逆十字固めを極めていた。
とてもいつもの楚々としたお嬢様には見えない。とんでもないお転婆娘である。
「じゃじゃじゃ~ん!!! 」
未来は自慢げに携帯電話の壁紙を見せる。
「これが、私が風船を使って撮影した宇宙の画像なのですっ! 」
嫌な予感に腕が止まる二人。
それ以上に戦慄を覚える一人。
「宇宙? 」「きれいな写真ですね」
腕が緩んだ一瞬をつき、和代は新堀の白いふくろはぎを噛み、一瞬で脱出。
うろたえて逃げようとする潤子をとっ捕まえ、華麗なコブラツイストを極めた。
「いだい いだい いだい~~~~! 死んじゃう~~??! 」
潤子の悲鳴を無視し、和代はあきれて言う。
「一応、言っておくが、それ、成層圏だろ。宇宙じゃねぇぞ」
「へ? 」未来は不思議そうにしている。
和代は潤子へのコブラツイストを一瞬で変形卍固めに。
「52の関節技がひとつっ?! 地獄卍っ?!!! 」「いだいいだいだいカズちゃんゆるじて~!? 」
人間の動きではない。お前は牛丼ひとつで80年稼動する超人か。
しかし、この四人には親の世代の漫画に対する知識はない。何処で覚えたのか。疑問である。
「簡単に言うとだ」和代は続ける。「大気がある」
「あるんだ。知らなかった。というか。あっちゃ駄目なの? 」
首をかしげる未来に三人の表情が凍った。
……時が進んで文化祭。
「天文部」製作の気球はぐんぐん空に上昇し、その様子を校内に実況中継している。
思いのほか大盛況。実況動画に大盛り上がりなお嬢様方。調子に乗る未来。
一方、結局手伝いをさせられてしまった三人はぐったりしている。
特に、気球に乗せられかけた和代は「マイナス45度の世界に行かなくてよかった」とため息をついている。
未来は成層圏の寒さを知らなかった。いや、成層圏付近では気温が逆転するがここでは触れない。
「あ」「あ」「あ」
気球は爆発したらしい。映像はきえた。
「あんなんにあたしを乗せる気だったんだな」「あは。あっはっは」
笑ってごまかす未来に、和代は彼女の幻の奥義、脇固めを極めた。