ガン〇ム作成禁止令
「大変だ」「どうした」
この二人が出てくるときは大抵過去の話だ。
密室で会談する男二人。一人はとある記事を男に見せる。
そこには無人兵器禁止条約についての内部資料がリークされていた。
「不味いな」「そうか? 私はとても嬉しいぞ」
ウキウキとした表情の男を見て記事を持ってきた男は眉間に皺をよせ、彼の鼻面に指を突き立てようとする。
「不敬だぞ。次期総理の私に」「あん? どの口がいっただ(が)や?! どのくちがいっただが?!」彼はキレると鳥取県の方言が飛び出す。
「ほら、これで無人兵器じゃないロボに出来る」「このダラズがやっ?!」
ちなみに、鳥取県では阿呆を足らない。『だらず(足らず)』と呼ぶ。
汗も噴きださん勢いで唾を飛ばす部下兼戦友兼親友に彼は呆れつつも話題を変える。
黒い高級木材でつくられた机の上には大きな花が活けられている。
男が口を開き、滑らかな舌づかいで言葉を紡ぎだす。
「これを見ろ。今だOSが未完成で苦労している処だが」「素直に米国製のOSを使えと圧力がかかっているぞ。予算も圧迫している」「ばかいえ」
全てのインターネット情報はあの国の管理下にある。
検索した言葉、ビックデータは集積され、かの国の諜報機関に渡っているとウィキリークスが暴露したのは記憶に新しい。
そもそも資本力が違いすぎる。国内どころか世界中のインターネット企業の殆どが買収もしくは傘下になっていくのが時代の流れだ。
「情報世界はあの国の植民地だな」「……」ふと男の頬が緩む。
「『こすもすねっと』は別だがな」「子供のお遊びでありながら世界を制すると言われているアレですか?」「新堀君はいい子供を持っている。実の子供たちはイマイチだがな」
「新堀の妾腹の息子は官僚志望、娘は跡継ぎでしたっけ」「一代で名門、日本家を乗っ取った新堀君の後釜には足りない器だな。『今のところは』」そもそも二人とも高校生にすぎないと続ける男に「間に合うでしょうか」と問う長身の男。
「そんなことよりガン〇ムだ。乗れるぞ。楽しいと思わないか」「思いません。戦車でも作ったほうが予算も楽です!!」
年甲斐もなくはしゃぐ小柄な男に長身の男は呆れる。
まったく。大人げない。だがこの男は日本の切り札になるかもしれない男なのだと思うと邪険にも出来ない。
『選挙で民主党は大勝したし』彼が総理大臣になる日は近いのだ。




