瞳の中の未来を
あれだ。ダンスゲームをもとにUIを作ろう。誰かが呟いた。
「筐体を買う予算が通らないんじゃね? 」未来がぼやくと全員の非難の視線が集中。
「部長。まさか、『こすもす』を部費で改造するおつもりではないでしょうね? 」「ダメ? 」
ダメに決まっている。
「ぼくらが出すのはアイデアだけですよ」「ちぇ。使えねえ」ガタン。
悪態をつく未来を小早川はニコニコ笑いながら椅子ごと屋上につるした。
「ぎゃああああああああああっ?! やめろ小早川ッ! 下にパンツ見えるッ?! 」命の危険よりパンツなのが未来らしい。
神楽坂高校天文部部室は屋上の天文台を兼ねている。
山の上(旧校歌では『丘の上』を主張しているが)にある屋上はびゅーびゅーと風が強い。
「うわあああああんッ?! 小早川ッ ごめんなさいごめんなさいおろして~~~~~~~! 」
小早川はロープをしっかり結わえて、部室に戻ってきた。さすがに全員ドン引きである。
「暴れなければ落ちないし、落ちてもプールの上だから」
小早川は相変わらず温和な笑みを浮かべているが、普通に退学クラスだ。相当不満が溜まっていたのであろう。
「お前、DVは辞めろよ」新田芳伸が恐る恐る小早川に告げる。
「うん。部長だから大丈夫」「だいじょうぶじゃない~~~~~~! 胸に風が入ってさみぃ~~~! 」
未来は相変わらずのノーブラだ。普通に寒い。
騒ぎを聞きつけてきた教師達に、トックリは平然と告げた。
「我が部長による宇宙遊泳の実演ですわ」
未来の普段の奇行が酷過ぎるため、この酷過ぎる嘘は普通に信じられた。




