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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
希望編。夢の先には勇気の未来(みき)

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『こすもす』改造計画

 神楽坂女学院改め神楽坂高校二年生。天文部所属。藤崎ふじざき恵美子えみこは戸惑っていた。

これでも神楽坂女学院時代からの天文部オリジナルメンバーとしてそれなりに尊敬されている彼女だが人見知りが激しく、口数が少なく、存在が空気である。

そもそも周囲がよくない。ほかのメンバーは未来にトックリにシラアエ。普通に濃い。


 未来は部長としても『こすもす』社長としても有名だ。奇行ではもっと有名だが。

シラアエは何かあると小さな箱や机の下に逃げる。子ネズミじゃないんだから。

こんな妙な先輩に囲まれれば多少は濃くなるはずなのだが恵美子にはその兆候がない。


「恵美子さん。そこに立たないでください」「はっ はいっ お姉さま」

思わず生返事。藤崎の表情に脅えが走る。


「学校では。『栞さん』もしくは『徳永先輩』と呼べといったはずです」

大量の資材を抱え、資材管理『徳永栞トックリ』はつぶやいた。

そして足元に未来が転がした乾電池に転び、資材の下敷きになった。


「きゃぁ! お姉さま! 」「学校ではっ?! 」

腰を抜かしたトックリに駆け寄る藤崎。二人は腹違いの姉妹である。



「では、部長が部を私物化する問題は遥か彼方のアンドロメダにまで置いておいて」

相変わらず椅子に縛り付けられた我らが未来を無視して新田芳伸が幻灯機で『こすもす』のコクピット画像を示す。恵美子はとりあえず頷いた。恵美子にはあまり主体性がない。


「我々の使命は『高校生でも宇宙に行ける』世界を実現するため、宇宙船のUIユーザーインターフェイスの改善を行うこととします。各自こちらの『こすもす』資料をみてください」

新田が幻灯機で表示する『こすもす』の内部はゴチャゴチャした計器やコード、あり得ないほど多いセンサの表示などなど恵美子が考えるまでもなく人間には到底操作不可能な代物だった。


「なにこれ? 」「銀河○道999の計器類みたい」「こんなん見れるわけない」「というか、部長。これ人間が操作できるんですか?! 」思い思いにセリフを述べる天文部メンバーに未来は毒づいた。

「飯島君は操作できるぞ。俺は無理だが」幼児がどうしてこんなもの操作できるんだ。

この部室に飯島は警備の目をすり抜けてたまに遊びに来るが、チョウチョを追っかけて遊んだり、高校生たちになついていたり、部室内の書籍でドミノ倒しをして遊んでいる姿からは恵美子には絶対想像できない。


「あの子が? 」「無理だよ。どうなってるの? 」「俺も飯島君が操作しているのを見たことがないしな」

思い悩む彼らに副部長、小早川がつぶやく。

「というわけで、内部画像を撮ってみました」

小早川が『こすもす』内部に仕込んだ小型カメラで飯島の動きを追ったという画像を見た恵美子を含む部員たちは絶句した。


「……」「……」「……」「……」

超人的な動きで飯島の指先が踊り、右に左に後ろに前にとレバーを倒しハンドルを動かし、

飯島の視線が目まぐるしく正面から左右、飯島が勝手に設置した後方ミラーに動いている様子が示される。


「あの子、人間??! 」「自信がない」皆が叫ぶのも無理がない。一年たっても容姿変わってないし。

「これを、僕らが動かせるほどにUIを改善するわけですよね」一年生の一人が手をあげる。


「無理じゃないですか?! 」彼の叫びは理解できる。

「無理でもやるんです」トックリはつぶやいた。

「無理が通れば道理は引っ込むんだよ。トックリ」やる気あるのか新田。

「まぁ、さすがにほかの会社や宇宙団体は高校生にUI周りは公開してくれなかったしなぁ」小早川はため息。

「部の私物化にもほどがあります。選挙を行い、小早川副部長を部長として再編成すべきです」気の強い少女がつぶやく。確かに小早川の人望は半端ないが本人がそれを望んでいない。


 激しく意見を交わす天文部メンバー。男女ともお互い譲らない。

たまらずしゃがみこんだ藤崎の視線の先に同じく脅えた瞳が移った。

机の下に隠れたシラアエ先輩こと資料管理・白川妙子だった。


「何をしているのですか。先輩」藤崎の言葉にシラアエはぶるぶると首を左右に振った。

同類がいるのは、藤崎にはとてもうれしいことだった。

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