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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
希望編。夢の先には勇気の未来(みき)

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宇宙はさておき、大学いけ(朝日談)

「なぁ。朝にぃ」「ん? なんだ? 未来みらい」今は未来みきなんだけど。未来はそう思ったが口にはださない。

もう少し議題に出したい。もとい抗議したいことがあるからだが。


 未来にしては早起き。

乱れたパジャマは何かイケナイことをした事後に見えなくもないが単純に寝相が悪いだけだ。

タブレット端末のインターネットラジオから海外ラジオのノイズのないクラシック音楽が流れる中、

丁寧にフライパンを反してチャーハンを作る朝日を凝視する未来。


「あのさ。朝にい」「だからなんだ」

手早く調理を終えた朝日はさっさとフライパンを洗い、コンロ周りを掃除している。

「前は、キンピラゴボウのチャーハン」「うん」

その前は。ゴーヤチャンプルーのチャーハン」「ゴーヤは絶品だとか言ってなかったか」確かに両方美味かった。

「で、今日はおからのチャーハン! 毎回毎回俺が残り物をしたらチャーハンにしてないかっ?! 」

さすがに塩味や胡椒、未来が好きなニンニク七味唐辛子や辛子明太子でごまかしていても、ほのかな甘みはごまかせない。


「もったいないじゃないか」「他の工夫をしろっ! 」

「というか、お前が作る料理はまずいッ わざとだろッ 」「悪いかッ うまい料理を朝から食いたくないんだッ 」

「お前のまずい飯に付き合わされてたまるかッ 」「義兄ならがまんしろッ 」

「俺は小早川君じゃねぇッ! 」「小早川の名前を出すなと言うておろうがッ?! 」


 醜い兄妹喧嘩が再び始まった。とはいえ、未来では朝日には勝てない。

未来だって女性としては身体能力が比較的高いほうだが、標準のレベルだ。

対して朝日は機転が働き、身体能力以前に『なぜか死なない』妙な特性を持っている。

具体的には未来の眼の前でトラックに撥ねられてかすり傷で済むといった類のものだ。


 未来は知性、身体能力で大きく朝日に劣る。

未来の身体が男性のもののままならばある程度の成長が見込めたが、

女性の成長期は未来の年齢ではすでに過ぎている。

そして、内臓の構造上、女性になった未来曰く『男の時と比べて腹に全く力が入らない』らしい。

これでは無謀な喧嘩になるが。


 未来は朝日にも予想外の行動をとった。

「えいっ! 」未来はパジャマを一瞬で脱ぎ棄てると朝日にそのままぶつけた。

「なっ?! 」すかさず手元のオタマで凶器攻撃。足払いをかけて馬乗りに。

「やめろっ! やめんかっ! 」パジャマを振り払った朝日の上で、

上半身素っ裸、下半身ショーツのみの未来が勝ち誇る。

「ぐははははっ 観念しろ! 朝にいっ! 」「ちょ! 卑怯だぞッ! 」

「卑怯もなにもあるかっ! 兄貴が男の身体の時点でハンディ戦だッ 」

調子に乗って襟首をつかみ、さらなる追撃をかけようとする未来と、反撃を試みようとする朝日の眼の前で。


 ごと。鞄がおちた。

「……」新堀だった。


 チャイムを押しても誰も出てこない、加えて男女の争っている声。

さらに鍵がかかっていないこと、未来は時々身辺警護が必要なことを憂慮しての行動だったが。


「兄妹で何をしていらっしゃるのですか」ニコニコと修羅の笑みを浮かべる新堀。

朝日は知らないが、新堀は某一八禁サイトに自作小説を投稿することを秘密の趣味にしている。

お嬢様然としているが、先ほどの蛮勇に加えてちょっとエッチなところもをある。


「もちろん! 朝にいを襲っていたッ 」「不潔ですわね」

致命的な誤解を与えるようなことを言って威張る未来に誤解を解こうとする朝日。半眼で睨む新堀。



「早起きするとロクなことがない。美味しいものを食べた時はさらに酷いことになる」

未来は誰にも語らないがそう思っている。だから未来は本来好物のおからもケーキも嫌いだ。

前者は自分がオトコを辞めた日の食事。後者は二回も父と母を失った日の味だからだ。

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