部員。残り一名! 「だれも」「入るとは」「申しておりません」
「だから、星のロマンってのを……星の素晴しさを皆様に知ってほしいのです」
未来は力説するが。
「ブラックホールってどうやってできるの? 」「えっと、星が潰れてどうにかなって」
潤子の問いにしどろもどろになる未来。
「……」
和代が複雑な数式を唐突に喋りだす。呆気にとられる娘二人。
意味がわかってパチパチと手を叩く潤子。「もしかして」新堀も気がつく。
わからないのは、さっきまで星の素晴しさを説いていた『娘』だけ。
和代と潤子はこの学校でトップの成績を誇る。
学年ではない。学校全体である。三位は新堀だ。
「どうせ。あたしゃバカっすよ。貧乏だし、親もいないし」
兄貴代わりは交通刑務所送りで友達いないし。
「胸もありませんね」「うっさい」
新堀の反撃により、ブラックホール以上の深淵に囚われる未来。
「でかくても困るだけじゃん」潤子はこともなげに言う。
反撃の機会を得て赤色巨星なみにテンションの膨れ上がっていた新堀は潤子の余計な一言で超新星爆発を起こして半径5光年分の生物が全滅するほどのショックを食らった。
ちなみに、この一言は未来に対してもトドメとなった。かつて繁栄を極めた恐竜を滅ぼした隕石のごとく。
「何事も程々が一番だな……ですわ」
あわてて言い直す和代はなにごともなかったように詩集を広げたが。上下逆だった。
蝉の声の下、和代の忍び笑いが肩を落とす娘二人の耳を通り過ぎていく。