空に行こう
「部長が何を考えているか真面目に判らない」
大柄な身体を小さくして頭を抱える副部長・小早川忍に企画・新田芳伸は平然と答えた。
「いつものことじゃん。あの性格だぞ」奔放だし、適当だしと続ける。
ホコリだらけだった部室は現在、『雷鳴館』時代の生徒との合併、
神楽坂女学院時代の『四人』の部員の努力により、生け花のほのかな優しい香りが漂う清潔な部屋となっている。
もっとも、元もとのこの部屋の主には今の環境が少々気に食わないらしい。
部長であるにもかかわらず、未来は時々エスケープをかます。
今日も、本来部活内のミーティングなのだが、いるべきはずの部長がいない。
未来は例によって赤点を取り、見事に水鏡澪とともに麻生美佳の補習を受けている。
「澪はバカじゃないとおもうんだがなぁ」「余計なことで悩むクチだからな。奴は」
同じ『雷鳴館』組の二人は呟く。
「何かあったのでしょうか」資料係にして今回書記も勤める白川妙子が呟く。
基本的に未来と相性が合わないが、本気で憎みあっているわけでもなく、むしろ昨今の関係は良好だ。
備品管理の徳永栞もまたそうであるが。
「芳伸さま。部長も単純なバカではないのですよ? 色々お考えになっている所為で色々おろそかになるだけで」
『備品をまた持ち出した』といつも怒っているトックリ嬢は珍しく未来をかばった。
「芳伸さま? 」「芳伸さまねぇ」「羨ましいですわね。徳永様」
その言葉を聞いて一気にトックリ嬢の頬が燃え上がり、
右手で顔を隠して新田のほうに『違う違う』と言いたげに左手を振ってみせる。
「な、な、なんでもないのです。ついつい言い間違えただけで」「ほう」「詳しく。お聞かせ願いたいところですね」
からかう小早川とシラアエに咳払いを重ねて誤魔化すトックリ嬢。
当の新田はというと鼻をほじってボケーっとしている。トックリの機嫌の矛先はそんな新田に向かった。
はっきりいって八つ当たりだが、新田の態度にも問題がある。
ばし。
ニコニコ笑ってトックリ嬢が新田をノートで軽く叩く。
「なにすんだ。トックリ」「誰がトックリですか」
「トックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリトックリ」
「今日の会議はお流れかな」
相方とその彼女の喧嘩を眺めながら小早川はぼやく。
「そのようです」
キーキー騒ぐ相方、トックリ嬢の痴態に呆れつつ、
小柄なシラアエは机の下に隠れて呟いた。落ち着くらしい。




