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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
友情編。瞬間(とき)も永きも夢幻の未来(みき)

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小早川の受難

「部長! 付き合ってください! 」

でかい。ごつい。こわい。そんな容姿の副部長。

元『雷鳴館天文部部長』小早川忍だが、中身は花を愛し、人に優しく交渉術も巧みなイケメンである。

実際、お嬢様方にも人気がある。見た目は酷いが社交的なのだ。


「却下」

しかし、未来には効かない。

そもそも未来は事情があって女性の身体になっているし、

その身体に慣れてきてはいるが、元を正せば男だ。

確かに昔から女より男の子に興味があったが、否定したい事実である。



 小早川とその相棒である新田は去年生徒交流で一ヶ月だけ旧神楽坂女学院に在籍していたことがあった。

女所帯で男二人が起こすトラブルは枚挙に暇がなく、その仲裁に入ったこともある。


 そのときに惚れられていたらしい。迷惑な話だ。

「アサ兄や大地小父にいならまぁ許せるけど」とんだブラコンである。

靴箱に一人向かう未来は苦笑い。

「あと、ほりりんなら処女を奪ってもいい」お前に今男性器はない。未来。

女性器なら。ある。沙玖夜の話によると子供を宿すこともできる。らしいが。


「実感わかない」

特に、男に触れられるのは。怖い。


 小早川がいい奴なのは知っている。だからこそ怖い。いい奴以上の関係になること。それは。

また。それ以上想像するのを未来は止めた。がたがたと身体が震え、春先なのに身体中が総毛だっている。

気丈かどうかは知らないが、明るくて無邪気で何も考えていない。皆は未来をそう評する。

現実は違う。怖いのだ。怖いから明るく振舞うのだ。



 靴箱を開ける。いまどき珍しいラブレターに苦笑い。

普通今ならメールだろう。LINEとかでもいいけど。

男性にしては流麗な字に苦笑いした未来はその中身を破って捨てた。

そして。ふと戻ってきて。大事そうにその紙片を拾うと、杜撰にスカートのポケットに突っ込んだ。


 数日後。

「そうか。そんなに私が好きか。ならば」

未来はニコニコと笑いながら呟いた。


「宿題やっておいてっ!! 」

小早川の恋が実る日は。遠い。

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