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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
青春編。世界の危機(きき)より天文部の未来(みき)
3/78

お願い。天文部に入って

 「お願いっ! 和代さん! 天文部に入って! ……くださいな」

「やだ。……こほん。お断りします。遥さん」

同級生。高峰和代。趣味は読書。絵を描くこと。


 お嬢様学校になぜか通う羽目になった貧乏人の未来にとって、

同じ貧乏人の高峰姉妹は一番声をかけやすい。


 この姉妹は昨今転入してきたのだが、色々な意味で有名人である。

その武勇伝は数々だが、まず美人だ。もう悔しいほど美人だ。


 和代の楚々とした美しさと気品と。

……未来の瞳が和代の胸元に注がれる。ガリガリの癖に、その姓と同じく。

「なんで、こんなデカくて形いいのよ」「口に出して言わないでください」

和代は冷たい目を未来に注ぐと、アルチュール・ランボーの詩集に視線を注ぎなおした。

「それに、Dしかない……です」充分、デカイ。

ちなみに。時々和代のお嬢様言葉は。詰まる。


「遥さん。天文部がつぶれそうだからって高峰さんを取らないでください」


 そう抗議するのは文芸部部長の『新堀にいほりゆい』。

高峰姉妹の自称『親友』である。特に妹のほうの弱みを握っているとしか思えない。

高峰姉妹は、姉が主導権を握っているように見えるが、実は妹が姉の精神的支えになっている。

ゆえに妹を握れば姉はついてくる。そのことを見抜いた新堀。

楚々とした美人だが、なかなかに腹黒くて、未来とは気の合う娘だ。


「勝った」

「何を持って勝利としたのかは存じませんが、私はまだ発展途上です」


 何かにつけて言論で負けそうになると胸のサイズの話をする未来にウンザリしている新堀。

昨今は彼女にいほりの深刻な悩みになりつつあるのだが、当事者の未来は知らない。

前はもともと優れているとしか言われない自分の容姿を気にするような娘ではなかった。

未来の悪影響である。


「ほりりん~。別にいいじゃん~助けてあげようよ~」


 救いの女神。高峰姉妹の妹。潤子じゅんこ

姉妹といっても容姿は激しく異なる。

こっちは。一言で言うと。救いの女神というより。


「ジューン? 」「ほに? なに? カズちゃ……和代姉さま? 」

「下着、つけろ」「いいじゃん。暑いし」豊満。もとい豊穣の女神。


 この暑い中、なぜか彼女だけ長袖に長スカート。

しかし、改造の欠片もしていない制服を押しのける圧倒的な自己主張の塊二つ。


「はしたないです」

新堀が言い放つ。

「死んでいいぞ」

未来が呪いの言葉を吐く。


「おふたがたとも酷いですわ」

潤子はそういって、校内持込禁止のはずのスマートフォンを取り出していじけてみせた。


「先生に叱られますよ」

未来が言うと、「文芸部はスマフォOKだもん」と返事が返ってきた。

ニコニコと笑う潤子は最近書き出した『下町の銭湯で働く少女を主人公にした物語』を尋常ならざる速度で親指一本で書き上げて『送信』を押した。

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