夢 遥か彼方
「ピートの奴、大丈夫かなぁ」
落ち着かないときは9mm拳銃を握ってしまう癖がついてしまっているかなた。
「レア博士に発作が起きたらどうするの? 」
未来が心配したとき、かなたはこともなげに言った。
「真澄って未来が呼んでいる子が憑いている限り、絶対大丈夫」「憑いている? 」
付いているならわかるが。
色々と問いただしたい所だが、飯島がついている限り幸運に護られるらしい。
「ただ、小さなトラブルは恐ろしいほど発生するけど。因果律って曲げると酷い目に遭うから」
「あ、あの。かなたババア。私にもわかる説明してくれないかな? 」作者も理解不能。
「とりあえず飯島君と一緒なら絶対大丈夫ってこと? 」
かなたにそういってみる未来。微笑みながら頷くかなた。
「ところで、なんで飯島君をピートって言うの? 」「ナイショ」
かなたはそういいながら空を見上げた。
「レア博士。気分は? 」「ありがとう。飯島さん」
とても快適よ。レア博士はそういった。ちなみに飯島が操縦することを最後まで反対したのは彼女だった。
「子供に操作できるのなら、私が操作します。子供をガンマ線に晒すわけには行きません」と。
……その操縦が殺人的な難易度と計器類を同時に見る必要があることを知るまでは。
「どうしてこんな非実用的な実験機以下の代物を子供が操縦できるのですか? 」「子供じゃないからね」
飯島は幼児の姿で、レア博士以上の『大人』の顔を見せながら高度を上げていく。
「このバックアップデータを利用して、操縦を簡易化するようにするけど、それまでは僕が操る」
飯島はそういいながら微笑む。
「あなた。何者ですか? 日本の陸上自衛隊の関係者のようですが」「君には関係ない」
「……女子高生が作るような会社にも。ですか。人間は愚かですね」「君も人間」
ため息をつくレア博士に苦笑してみせる飯島。
「それより」「ええ。地球が良く見えます」
この光景、夫や子供達に見せたかった。レア博士は心の中でつぶやいた。
瞳を覆う水をレア博士は拭った。ここにはもう。重力はないから。
「人を縛るのは星の重力でしょうか。しがらみでしょうか」「知らない。それがないなら、人間なんて……」
「『獣』のほうが、ずっと正しい存在さ」飯島はそういった。
暗い星の海の中を、『こすもす』はゆっくりと進んでいく。眼下にはさまざまな国や大陸、島々が見える。
「神よ」「……『神』かぁ」
言いたいことは色々あるが、老婦人の適わぬ夢を適えた運命の配慮には敬意を示したい。
飯島はそう思いながら、高度を上げていった。




