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そして 宇宙(そら)に向かう船  作者: 鴉野 兄貴
始動編。逝くも消えるも死出の未来(みき)

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私を宇宙(そら)に連れて行って

『私を使ってくれませんか』

「ぱ、ぱーどん? 」「私はドイツ人です。"元"ですが」「はぁ」

未来が流暢な日本語を話す変な婆さんを連れて帰ったのはすっかり秋風が冷たくなった頃だった。


「おう。お帰り」「おっかえり~! 未来姉ちゃん!」

すっかり居候として馴染んだ森田と飯島に苦笑いする。


「かなたババアは? 」「今日は陸上自衛隊の用事でいない」

『一応』一平卒らしいのであまり自由には出来ないらしい。

かなたは結局このマンションを出入りしている。


「その御婦人は? 」森田が怪訝な顔をした。黒っぽい髪の老婆だ。

「レアと申します。森田さん。お目にかかれて光栄ですわ」


「おばちゃん。お茶~」


 飯島が気を利かせて茶をいれてくれた。飯島は何故か茶を淹れるのが美味い。

「あなた達が『こすもす』という会社を名乗って行っている活動はよく存じております」

正直、未来はあんまり宣伝しているつもりはない。現状、成層圏までいって写真とって帰ってくるだけの仕事だし、気象庁でも毎日やっている。ようするに仕事がない。

今の『こすもす』には『日本に帰ってこれるかは風任せ』という致命的な欠陥がある。


『私を宇宙に連れて行ってくれませんか? 』


 大戦時代のドイツに協力し、世界的なロケット技術者として名を成せたレア博士と未来はこうして出会った。

「あのさ。今の『こすもす』って、何処に戻ってくるかわかんないんだよ? 特攻より酷い」「存じています」

パプワニューギニアで酋長を一週間務めた飯島が言うのだから間違いない。

「なかなかね……。気球は風任せだ。ある程度は推進も飛行も可能だが、下手をしたらとんでもないところに」

森田は未来と新堀のお小遣い(『お小遣い』で片づけるには膨大な額だ)、近くの主婦たちから赤松夫妻が『善意の協力』を募った資金で新型のエンジンを作っているが……である。

ライセンスとかを未来に説明しても無理だろうし。


「私は、20代の頃から宇宙に憧れ,同胞から裏切者と呼ばれながらドイツにつきました」

「……」「……」「……おばちゃん? なんで? 」

30代半ば前のかなたはババア。レア博士はおばちゃん。未来の基準がわからない。


「時代の流れ……ですね」かつては美女と呼ばれたのであろう。レア博士は細い肩をすくめてみせた。

「あのね。アメリカやロシアにすっごいお金積んだら乗せてくれるんじゃない? 」

「私には不整脈があるのです。恐らく」「……」


「90を越えて、解ったのです」レア博士は微笑みながら呟いた。

「私は、宇宙に行ってみたいのです。未来さん。私をあの宇宙そらの向こうに連れて行ってくれませんか」

お金は払います。彼女はそういって頭を下げた。

『こすもす』社史において初の利用者にして、名誉社員としてレア博士の名前は残っている。

レア博士は当時20代の若さでV2ロケット開発に深く関わっていたという設定です。

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