これが『こすもす』一号です
「おおおっ?! みっちゃん。出来てきたねっ! 」
潤子はお嬢様言葉を完全に忘れて嬌声を上げた。
「素敵な気球ですこと。これで成層圏を目指すのですね」
一方の和代は気品を忘れない。最近地を出しすぎた反省もある。
名門女子高。私立神楽坂女学院の一角で、彼女らは気球製作に励んでいた。
放射線の輻射を防ぐシールド。空気の確保を行う装置に通信装置。そして推進装備。
「どう? どう? すごいっしょ?! 」無い胸を張る未来に更に無い胸を張り返す新堀。
「私のお小遣いも使っていますからね」「うっ?! 」
「借金ではありません。投資ですよ? 投資? 」「すいませんすいません新堀様。このお礼は身体で」
「いりませんっ?! 」新堀はウブだった。
「おーい。赤松。そっちの工具とってくれ」「はい。森田さん」
「おーい。お前等、弁当持ってきたぜ」「おう。清水。ちょっと待ってくれ」
「先生を説得するのに苦労しましたわ」
名門女子高に関係の無い野郎共を入れるとかありえないと新堀。
「まぁ、私の部下! だし」
胸を張る未来だが、『部下』といわれて『社員』たちがげんなりしているのを知らない。
「こっちこっち~社員皆で記念撮影するからっ! 」
何故かデジカメを渡された新堀を残し、銀の気球の前で思い思いのポーズを取る皆。
「あの? メインスポンサーの私は? 遥様」
「あ、後で撮って上げるから」「……」
皆が一様に移ったこのときの写真と、仏頂面で剥れる新堀を宥める未来の写真(誰が撮ったかは謎になっている)は、2020年現在の『こすもす』社屋で大切に保管されている。




