天文部に入りませんか
一人称視点
醜い子。
私は自分をそう思っていた。
スカートを穿いて歩くと、皆は私に気づかない。
私をいじめていた子が私に愛想よく振る舞い、担任が不思議そうな顔をしているのを見て病みつきになった。
色々あって、今の私は男ではない。女装を密かに楽しんでいた少年は。消えた。
今の私は、子供を身体に宿すことができる。身体。らしい。
今。私は危機に陥っている。
「いだいいだいいだい~~~~~~~~~~~~! 頭がおかしくなって死ぬぅ~~~?? 」
生理痛というものは、男性に生まれたものには耐えられず、数分で発狂死するほどの痛みらしい。
痛み止めは飲んだが、それでもこの痛みはどうしよう無い。
「大体なんで毎月内臓が取れるのっ?! 」微妙に違うけど、ソレくらいいたい。
「こ、これが、毎月来るのか」やめておけば良かった。しかし。
あまりお金は無い。何度も何度も洗面器にため水したでお水で部位ごとに手にためた水で洗顔。
その後流水で丁寧に同じことをする。最低三回。念入りに5回。手のひらは直接つけない。水でふやかせる。
終わったら丁寧に泡立てた石鹸で顔を包む。
顔の産毛を全てそり落とし、またため水と流水で顔を洗って石鹸を残らず丁寧に落とす。
明礬水でまた顔を洗い直し、顔を引き締めると同時に消毒。保湿用のクリームを丁寧に塗る。
黒い髪はいつもお米の研ぎ汁で洗い石鹸やシャンプーはほとんど使わず、
フケや汚れは丁寧に櫛を当てて、シャワーで取る。
全身鏡で体型がおかしくなってないか入念にチェックする。
満足した私は、下着を身に着けて他人にわからない程度の化粧をする。
「うん。今日も女の子より可愛い」自分に、自信をつける。
この朝の習慣が加わった。今までに無かったこと。これなら。全て。耐えられる。
思い出すのは満天の空、私の隣に座るお姉さん。
名も知らぬ彼女は『ぼく』を慰めた後、大きくなったら天文部に入れと言った。
小さくてでっかい星の魅力を熱く語るお姉さんに僕は恋をした。初恋だったと思う。
『今』の『私』は彼女を愛することはできない。
だけど、星を愛することは。できる。
「だれかぁああああああああ???! 天文部に入ってください~~~~~! 存続の危機なんですぅ~~~~?! 」
「またやってる」「顔をあわせるなよ。潤子」「さて、原稿原稿」友人三人は。冷たい。