汚された
これが涙なのか雨なのかわからない。嗚咽の声が自分の声だと気がついたのは可也たってからだった。
お尻が痛い。凄く痛い。体中が痛い。服が破れてボロボロ。体中殴られて。痛い。
誰だかわからないし、今でも顔は解らない。解るのは怖かったことと痛かったことと頭がおかしくなるほど嫌だったことだけだ。
「嫌だ」
もういやだ。男の子なんて嫌だ。男はもっと嫌だ。
「嫌いだ」嫌いだ。嫌いだ。みんな嫌いだ。誰も助けてくれないんだ。
「ぼうや。どうしたの? 酷い怪我っ?! 」
綺麗なお姉さんが服を貸してくれた。花柄で少し恥ずかしかった。
僕はお姉さんの部屋で泣いた。
お風呂で必死で身体を洗った。痛いのも我慢してお尻の穴に指を入れて洗った。
痛さとぬめぬめした気持ち悪いのは一週間は取れなかった。
男の人に触られるのは、一生ダメだと思う。
ずっと泣いている僕をお姉さんは慰めてくれた。
遠い親戚のおじさんや、近所のおじさんたちは何故か警察に連れて行かれた。
僕はまた一人になった。
「……」
あのときの花柄の服、返しそびれたけど。
恥ずかしくて人前で見せられないけど。
凄く綺麗だと思う。お姉さんのように。




