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3章12節「確かな評判とその重み:王都凱旋」


王都への帰還は、静かなものだった。


ヒュドラ討伐という大任を果たした彼らを、門で出迎える者など誰もいない。

彼らはただ、疲労困憊のまま、それぞれの宿へと一度戻り、それからギルドへと向かった。


だが、ギルドの中では、その事実は確かな熱を持って受け止められていた。


一行が受付で依頼の完了を報告し、将軍から預かった軍功書を差し出すと、受付の女性は、その羊皮紙に刻まれた紋章を見て、一瞬だけ目を見開いた。


しかし、すぐにプロの顔に戻ると、手際よく確認作業を終え、奥へと駆け込んでいく。


しばらくして戻ってきた彼女は、穏やかな、しかし敬意のこもった声で一行に告げた。


「―――ギルド長がお呼びです。執務室へどうぞ」


 


王都冒険者ギルドの最奥、ギルド長の執務室。


そこに通された彼らを待っていたのは、歴戦の古強者であるギルドマスターの、険しい顔だった。


「―――軍功書、確かに拝受した。素晴らしい働きだったと、将軍からも報告を受けている」


ギルドマスターは、アキラが差し出した羊皮紙に目を通すと、深く頷いた。


「約束通り、追加の報奨金を支払おう。ギルドとしても、君たちの功績には感謝する」


受付で手渡された革袋はずっしりと重く、中には金貨が何枚も混じっていた。


その重みに、パーティーの誰もが、自分たちが成し遂げたことの大きさを改めて実感していた。


 


□■□■□■


 


その夜、アキラは三人で飲む楽しさを、改めて実感していた。


これまでは、依頼が終わればまっすぐ家に帰るのが常だったが、ヒュドラ討伐の祝杯の後から、グッズやグンターと共に、男三人で飲みに出かけることが増えていったのだ。


最初は、グッズが行きつけにしている、ギルドから少し離れた居酒屋だった。


だが、ある日のことだった。


「悪い、俺は今日、ちょっと違う店に行かなきゃならんから、ここで」


祝杯を終え、ギルドを出たところで、グッズが一人だけ別れようとした。


「どこへ行くんですか?」


グンターが尋ねると、グッズは少し照れたように頭を掻いた。


「馴染みの女がいる店なんだが、最近顔を出してなかったら、いい加減来いって呼ばれちまってな」


「俺たちも、行っちゃダメですか?」


グンターの、好奇心に満ちた言葉に、グッズは呆れたように笑った。


「別に構わねえけどよ……お前らも好きだなあ」


 


そうして連れて行かれたのは、これまでの酒場とは全く雰囲気の違う、女性が客の隣に座って接待をしてくれる、いわゆるクラブのような店だった。


薄暗い照明、柔らかな絨毯、そして、なによりも美しい女性たち。


彼女たちは、エルフやそれに類する種族なのか、人間離れした美貌を持ち、肌は本当に透き通っているかのように白い。


胸元も大胆に開いたドレスを身にまとい、客の隣にぴったりと密着して、親しげに酒を注いでくれる。


その、華やかで、少しだけ背徳的な雰囲気に、アキラはすっかり魅了された。


 


それからというもの、アキラは週に一度ほどの頻度で、グッズたちと共にその店へ通うようになった。


ヒュドラ討伐の功績は、ギルドを頻繁に利用する裕福な商人や、依頼主となる貴族たちの間でも、噂として広まっていた。


「希望の園」は、困難な依頼でも確実に成功させてくれる、信頼できるパーティーとして、評判になっていったのだ。


その結果、彼らは依頼を終えた後に、他の実力派パーティーとの飲み会や、商人・貴族との食事会に招待される機会が、格段に増えていった。


アキラは、そうした華やかな席にも、少しずつ慣れていった。


もっとも、グッズはそういった堅苦しい席が苦手なようで、「そういうのはリーダーの仕事だろ? 俺はパスだ」と、巧みにアキラに役目を押し付けていたが。


 


やがて、ギルドの掲示板から依頼を探すだけでなく、特定の商人や貴族から、直接、指名で依頼が舞い込むようになった。


パーティーの収入は、シルバー等級に上がった当初とは比較にならないほど、安定し、そして増えていった。


アキラは、満たされていた。


愛する妻は、日に日に美しくなっていくように見えた。

最高の親友は、いつも自分たち夫婦を気遣い、退屈な日常に刺激的な楽しみを教えてくれる。

そして、新しい仲間たちは、今や王国でも屈指の実力者として、自分をリーダーと慕ってくれている。


彼は、この充実した日々を、ただ純粋に楽しんでいた。



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