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第三十八話 新生活は終活とともに。

むしろ:主人公。世界への反抗心から死を追い求める。流されやすい性格。

うつろ:死を撮りたい狂人。脳をいじって記憶を消す術を持つ。

めいろ:うつろの旧友。死を嫌う常識人。少し押し付けがましい。

もっとやりようはあったのかもしれない。

やはり自分のことをもっと知らなければならないと、そう思ったのだ。


この現状を鑑みて…。


ポツンと窓際。

殺風景が広がる。

会話に困った私が変なことをしなければ、この孤独から解放されたのだろうか。


ポツンとただ一人、窓際。


休み時間がやってくる。


「隣いい?」

ほのかにフローラルをまとっている。

ブロンズの髪が異常に綺麗で。


「私、地星じぼし 創造論そぞろ。よろしくね〜転校生ちゃん!」

私は彼女に釘付けになった。

何か思い出せそうな…。


「ど〜したの、転校生ちゃんってば見惚れちゃった?」

「うん、そうみたい。」


言葉がこぼれる。

彼女は顔を紅くする。


「ちょ…恥ずかしすぎぃ〜!」

咄嗟に顔を隠す彼女が眩しくて。


これが、光かッ!!


「最初に転校生を落としにかかるとは、魔性の女とは君のことだね。」

ついで出てきたのは背高の女子。

短髪でタレ目がキューティな彼女。


「あなたの名前はなんですか?」

「うん?…よくぞ聞いてくれたね!!そう!!私こそは──」

「こいつぁ、薬菜やくさい 滴露てきろ。目立ちたがりのロリコンだ。」


ウルフカットのヤンキーが絡んできた。

すぐさま長身は言い返す。

「ご、語弊がある言い方はやめたまえ、みくろくん!!私はロリコンなんかじゃない!!ただ子供が好きなだけだ!!」

「ライクなら問題ないんだけどね〜。」

そぞろさんは二人を見て笑っている。


「アタシの名前はみくろだ。天蘭てんらん 御玄みくろ。姉御って呼んでもいいぜ。」

先輩風を吹かす硬派な女子。

それがみくろだった。


「よろしく姉御。」

「むくろくん、私のことはてきろって呼んでくれ!!先ほどの痴態は消去してしまってかまわないぞ。」

「…ロリコンさん?」


てきろは悔しそうに顔を歪ませる。

「ファーストコンタクトこそ完璧に決めたかったのに…。」

「うそだよ。元気だしててきろちゃん。」







【私は、みくろとてきろ、それにそぞろを知っている?】


どこで会った?

誰と何をした?

何もわからない。


突如襲いかかるのは懐古という温かみである。

浦島太郎もこんな気持ちだったのかな?


目頭が…。


「おいおいどうしたむくろ!!」

「大丈夫かい、むくろくん!!」

「ちょっとハンカチあるよ、むくろちゃん!!」


心配してくれるみんな、それがすごく嬉しい。

「…ありがとう、みんな。大丈夫だから。」


一瞬みんなは顔を見合わせる。

「保健室行こっか。大事があったら大変だし!!」

「え?」

「そうだな。新しい子分が傷つくのはアタシも嫌だ。」

「ちょっと」

「大丈夫だ。我が校の設備は非常に素晴らしい!!安心して心を落ち着かせるといいさ!」

「この人たち話全然聞かない!!」


***


私はなぜか保健室へとやってきた。

どこも身体に悪いところはないのだけど。


「…し、失礼します。」

広く、白い天井。

消毒液の匂いが鼻をさす。


おお、思ってたより狭っこい。


ガガガという大きな駆動音。

「よOこそ!!OまちしてOりました。転校生の彗星 躯さん!!」

妙にテンションが高い。

ってロボット!?

でも教師のみんなと違って…人型!?


「Oんや〜!?あなた、私のことOぼえてませんか?」

「だ、誰?」

「ロボTですよ!!」


知らん。

そもそも私何も覚えてないのよ。


「今はアポロさんに改造してもらってシエロと名乗っています!!」

「そう、よろしくシエロさん。」


私は自分の症状について説明することにした。

「えっと、私ちょっとした記憶喪失でして…もしかしたらここの生徒だったんじゃないかって思うんですけど…。」

「うーん、問題って非常に甚大ですネ。」

「モヤモヤも頭にこびりついてるんですよ。」


デジタルなその彼女は、必死に演算し始める。

「オーバーライド(上書き)…にしては。ツーツー。わかりました、むくろさん!!」


「あなたの記憶は全消去されました!!復元が不可能なほどに!!」

わお。

短く、そしてショッキング。

「ってことは、もう私の記憶は戻らないの!?永劫に!!」


するとケーブルを隠しながら首を横に振る。

「いいえ。これは本当に稀な例です。あなたは記憶を管理するところが二箇所あります!!」

??


「あなたは多重人格者です。もう一人のあなたの人格から記憶が回復する兆候が見られます!!」

「私が、多重人格者!?」


おお。

光が見えるぞ。


「それでそれで!!私は何をすればいいの!!」

「現状できることはありません。いや、一人なんとかできる人を知っています!!」

「誰、誰!?」

「元死活部顧問にして唯一の人間教師!! 蒸鴫ふかしぎ 浪漫ろまんです!」


だ、誰?

というか、死活部って何…。

何をする部活なの…!?


***


浪漫先生。

生徒からの評判はぼちぼち。


Sさん

「ん〜。浪漫センセはすっごい適当だね。テストとかも範囲広がったりするし賛否両論って感じの人〜。でも人間が教えてくれるってことに何かしら価値がある気がしたり…。」

Mさん

「アタシはあんまり好きじゃねえな。ただ授業中にこぼす話は面白えな。」

Tさん

「私は好きさ!彼が歩んできた人生をその立ち姿から教えてくれるようで、演者向きだと思うよ!!授業!?それはやめた方がいいね。」


ぼちぼちだ。


社会科室をノックする。

「失礼します。蒸鴫先生いますか?」

「ン?先生なら外でタバコを吸いに行ったみたいダ。」


喫煙スペースは決まっている。

昔じゃトイレで吸ってたというのだからびっくりだ。


「浪漫先生〜!!」

「なんだ、転校生か。改めて──」

「木上 夢白って知ってますか?」


風が止んだ気がした。


「…場所変えるぞ。」


学校を出て、最寄りのファミレスに入った。

ぶっちぎりで校則違反だと思ったけど口をつぐんだ。


「誰かから聞いたのか?」

「いいえ、私はむしろです。」


彼の匂いはニコチンの香り。

臭い。

非常に。


「信じられないな。あいつは人格矯正センターに連れて行かれた。転校手続きもしたはずだからな。」

「信じてください。私はむしろらしいんです!!」


先生は困った顔をしている。


「一ついいか?」

「はい?」

「むくろ、お前は死についてどう思う。」

「私は…」


これが鍵?

すこし頭が熱くなる。


「生物は…死によって…循環する?」

「よし、わかった。」


先生は指を差し向けた。

「お前はむしろで間違いない!だが思い出す必要はない!!」


生徒に指さすってどうなの!?


しかし、彼の言葉が気になる。

“思い出す必要はない”


なんの含み?

なんの危惧?


「…私は何度記憶を消されても思い出そうとしてしまうのです。多分。」

「ああ、知ってるよ。」


先生はタバコをつけようとして、店員に注意された。


「生きづらい世の中でも生きてかなくちゃいけない。それが千年続くとしてもだ。」

「多分、それは間違いだと思います。自由に死ぬことができるならそうすべきだと私は強く主張します!!」

「いいや。それは正しいことじゃない。まがいなりにも俺は教育者だ。だがな──」


「正しい道を教えるだけじゃなくて、いろんな道をあれこれくっちゃべるのも教育者の勤めだからな。」


「俺の奢りだ。お子様ランチでいいか?」

「ハンバーグがいいです。」

「俺はパスタかな。飲み物は?」

「…セットにドリンクバーを。」


「お前を止められなかった臆病者の主観を、君の成してきたことを躯、君に話すぜ。ドン引きするなよ?」


ピンポーン。

先生は呼び出しボタンを押した。

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