表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/53

第十六話 情報源はインターネッツさ

「はぁあー」

「どしたのむーちゃん。」


まさかてきろがアルティメットヘンタイだったとは。

「ショックなのー。」

「恋煩いてきな〜?」


私の誕生日ということで生活部のみんなで遊ぶことに。

バスで来れる町外れのボーリング場。


当然ボーリングなんてやったことはなかったので指を負傷。

めいろたちの活躍を見ながらクリームソーダを食べているというわけだ。


「おお。60点!!これは高いのかしら!!」

「それなりだな。確か全ボーリング競技者、通称リンガーの平均がその程度だったな。もっとも日本代表の平沼選手は300点をオーバーしたそうだけれどね。」


「何よ、全然高くないみたいじゃない。」

「フッ。数字とはどう見るかさ。他人ではなく自分を乗り越えることこそ生きる意味だと私は考えるよ。」

「何それ。」

「情報源はインターネッツさ。」


一気に話の信憑性が落ちたな。


こう適当なことを言う女子がおぼろである。

私は知らなかったけどなかなかの問題児のようで、学年の平均点を一人で下げ続ける女として有名だそうだ。


遠巻きで見てる分には面白いのだけれど、ちゃんと部員なんだよなぁ。

まじで私が部長なのか。

前よりも責任を感じる。


「あ、そうだ。そぞろちゃん、どうして昨日めいろちゃんの電話から出たの?一緒にいたとか?」


めいろは鬼気迫る表情でこちらを振り返る。


「そぞろ!!変なこと言うんじゃないわよ!!」

コワっ…。


「つれないな〜。私はめろめろの知らない世界を教えてあげただけじゃないか〜」

「あんたはいつもそうやってッ!!」


ちちくりあう二人、この短い間にここまで仲良くなったんだ。

お泊まり会でもしてたのかな…。


【お泊まり会】

少し苦い思い出。

思い出したのは二人の末路。

私は、前に進まなきゃダメだ。


「どうしたんだ、むしろ殿。」

近づいてきたのはおぼろ。


「大切なのは真実に向かおうとする意思、私はそう思う。」

わけのわからんことを…。


「君がめいろ殿を一人の女として見ていることは揺るがない。そこから踏み越える覚悟が、必要なのさ。もちろん、情報源はインタネッツさ。」

「別に妬いてるとかじゃないんだけど…」


「いやはやそれは早とちりだ!!ナッハッハ!!」

「ふふっ」

つられて笑ってしまった。

言葉はまるで通じないけれど、なんとなく愉快。


「しゃあストライク!!」

めいろがガッツポーズ。

そぞろと一緒にハイタッチ。

おぼろとストライク記念に動画撮影。


「よぉし!!やったるぞー!!」

私は勢いよく10号球を手に取り、頑張って投げる!!

…いや投げようとしたのだ。


「むーちゃん靴は?」

そぞろの声、あ。そうだ。

指怪我したとき、脱いだままだ。


ゴッ。

響いたのは鈍い音。

転倒。

打ちつけたのは頭。


球が軽ければ良かったんだけど…。

意識が暗闇に落ちてしまう。


***

白い天井。


「ここは…。」口を開けると隣で眠っていたのはこゝろだった。


「ようやく起きたのね。」

ドアから入ってきたのはめいろだった。


「あれ、みんなは。ここは家?」


めいろはやれやれと手を振った。

「あなたコケて死んだのよ。ここまで運ぶの超大変だったんだから。」

マジか…。ちょっと調子に…

「調子のりすぎ。」

「ご迷惑おかけしました…。」

先に言われてしまった。


部屋はしんと涼しい。

鈴虫の声音。

目覚まし時計には10時を指していた。


「はあ〜。まあ起きたことは仕方ないわ。許します。」

「ごめんね。この埋め合わせはなんでもするから…。」


めいろは一瞬黙りこくった。

「じゃあ…。いいえ、学園祭は私と回ること、いいわね!」


学園祭?

来週から学校始まるけど、もうすぐに学園祭やるの!?


「も、もちろん。めいろとならどこへでも!!」


「そ、そう。まあいいけど。」

暗闇で顔はよく見えなかったけれど、照れを隠していたように見えた。


「それにしてもあなたがコケた時の二人別人みたいだったわよ。」

「おぼろとそぞろが?」

「ええ二人とも慌てっぷりが凄まじかったんだから。」

「まあ、私たちはなれてるもの。人が死ぬのは普通ないんじゃない?」



目覚めてからかなり時間が経ってしまった。

「それじゃ、帰るから。あ、こゝろちゃんによろしくね。」


「全く、あなたにはもったいないくらい良い妹だわ。きちんとお礼を言っておくのよ。」

「うん、気をつけてね。」


玄関まで見送る。

「あ、そうだ。」

バッグから小さな小包を取り出した。


「誕生日おめでと、ささやかな友人からのプレゼントよ。」

「ありがとう!え、嬉しい。」


めいろはドアを閉めて家へと帰ってしまった。


「プレゼントだ、なんだろう。」

一つ、また一つ。丁寧に丁寧に包装紙を破る。


「ん?手紙と…なにこれ。」

人形のような何か。

読めない言語で書かれたそれは何かのお土産らしかった。


さっそく手紙を開く。


『親愛なるむしろちゃんへ


まず手紙の内容を声に出して読まないでほしい。


私は今人格矯正センターにいるの。


永遠に道徳の授業を受けているみたいなものだわ。


ここは最高よ、“正しい人間”になる方法を毎日毎日刷り込んでくれるの。


狂気じみてて楽しいわ。


まあ、こっちでなんとかするけれど。


問題はあなたの方。


むしろちゃん、あなたは今監視されているの。


もちろん、人格矯正センターに。


あなたの行動が発育上の異常だって見なされたみたい。


でもその根っこは変わらないでほしい。


その人形にはジャミング機能が含まれていてね。


部屋だけは傍受されにくくなったわ。


ごめんなさい、煩雑な目に合わせて。


自分勝手せ申し訳ないのだけれど…


私が帰るまで生きていて。


約束よ?


愚鈍な協力者うつろより。』


なんだぁこの怪文書!?

え、わたし、監視されてるの?

えっええっえーーーー!?!?


すかさず早くなるのは動悸。

今も誰かに見られてる…!?


…小さな紙切れが落っこちる。


『ps:生活部にまともなやつはいない。』

うつろからのダイニングメッセージ。


ふぬけた私じゃ死に至れない。

昔うつろはそう言ってくれたよね…。


死にすぎて忘れていた。

私の本当にやりたいことが!!


私は、再び炎が灯ることとなる。

絶望という名前の火種から。


死にたいという原点への情熱が。


「絶対、死ぬんだから!!監視してるやつになんか負けるもんですか!!」

その決意はこの不気味な日常を打ち壊すこととなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ