表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/53

第十四話 めいろイヤーは地獄耳

今日は八月二十二日。

夏休みをほとんど寝てたのはデカすぎる損失。


しかし過ぎたことは振り返らない、それがむしろという女ッ!!


まずはモーニングルーティーン。

ヨガは健康への第一歩。


頑張れば火ぐらい吐けそう。ファイヤー!!


「お姉ちゃん、今日はめいろさんと図書館デートでしょ。遅れちゃダメだよ。」


我が家の妹から叱責される、ダメな姉貴ですんませんね。


ん?妹?


こ、これは。

また勝手に人間関係を構築したな、うつろ!!


「ごめん。デバイスの調子が悪くて…記憶があやふやになっちゃったみたい…。」

部活中に考えたポカしたときの常套句。


「大変じゃない!!何を、何を覚えてないの??」


「はい…。あなたのことも全く記憶にございません…。」

まさか妹を生やすとは、うつろよ。これがどう死につながるのか教えてほしいところだ。


少女は少し照れくさそうにしながら自己紹介を始める。

「私は晴渡(はれわた)こゝろ。お姉ちゃんの全妹つまり正真正銘妹よ。」


全妹?血統上の妹ってことか。

まあ試験管ベイビーなら一人くらい血が被っててもおかしくないね。

にしてもこの子可愛いな。


同じ親から生まれたとは思えん。

目もととか、身長とか近しいところはあるな。


「ちょ、お姉ちゃん!?」

私はこころちゃんをマジマジと見つめてしまっていた。

彼女は照れて赤くなっている。

なんたるあざとさ、紅潮した顔は天使の権限だ!!


しかし、全妹が存在することは確率的におかしくない。

違和感はなぜ家に住み着いているのか、である。


まあいいけど。


で、めいろと約束?はて彼女からアクションをかけるとは、私がしらない行間にそれほどの進展があったのだろうか。


「妹よ。お姉ちゃんとめいろは仲良くなったのかね。」

距離感がわからず、思春期の娘に接するオヤジのようになってしまった!?


こころは若干引き気味に…

「何度か家に来てる。良い先輩だよね。」


めいろは年下には甘いようだ。

私のファーストコンタクトなんて銃殺ですよ。銃殺。

会って5秒で射殺。


唐突に誰かから睨まれているように感じた。

きっとめいろだ。

めいろイヤーは地獄耳だからね。


***


私は素早く準備を済ませて家を出る。

しかしまあ、暑いのなんの。


本当に死ぬほど暑い。

こればかりは万能細胞の適応化に頼るしかないね。


地下2F 店名図書館


「来たわね、むしろ。」

めいろの様子は前と変わりなかった。


「おはよう、めいろ。」

普段通りの会話。

久しぶりにしてはやや簡素で地味な挨拶だった。


図書館という場所の性質上、めいろは筆談を提案したのだ。


?なんでメッセじゃないの?

彼女は苦虫を噛み潰したように、ノートに文字を書く。


私が困るのよ。


??

せっかく文字入力に慣れてきたというのに、誠に遺憾である。


「この一ヶ月いろんなことがあったわ。」

シャーペンが紙の上で踊っている。


「最初に伝えたいのは、死活部の消滅とうつろの逮捕よ。」

出だしからショッキング。


思わず声が漏れる。

横で新聞を読む爺さんが舌打ちした。


ごめんなさぁい…。


「まず部活の消滅から。単刀直入に言えば活動が不健全だとみなされたのが原因。」


死についての研究を部活と言い張るのには無理があったか。

しかし、うつろがいろいろと調整してしてくれた、はずだったのだ。


「そして、うつろの逮捕よ。」

「学生は逮捕されないはずだよ。」


「そうね、逮捕という言い方は正しくない。正確には人格矯正センターに連れて行かれたらしいの。」


なんぞそのおぞましい名前の施設は?

「あなた、随分と変な顔するのね。」

思わずめいろぼ声が漏れる。


ふふッと笑うとジジイが再び舌打ちする。

実に偏屈なお方だわ。


「…らしいと言ったのは、私も覚えてないの。」

「記憶を消されたと?」

「上書きじゃないだけまだマシだわ。違和感が残るもの。」


部活とうつろの消失。

ますます死が遠ざかった気がする。


「でね。新たに部活を立ち上げたの。他の誰でもない、あなたが。」


「生活部。活動内容は不明。夏休みが明けたら文化祭のために出し物をするらしいわ。」


名前から活動内容がわからないのは部活として正しくないぞ!!

まあ、だから死活部は消されたんだろうけど。


「それで、部活のメンバーをまとめてきたわ。」

「詳細は夏休みが明けてからのお楽しみね。」


【生活部】部員 担当教諭 蒸鴫ふかしぎ 浪漫


 部長:木上 夢白

副部長:人道 明路

 部員:山霧 朧

    地星 創造論

    中腹 空


「なんか、名前いかついのいない?」

古語で言えばキラキラネームというやつだろうか。


「彼女は地星(じぼし) 創造論(そぞろ)。テンションが高い陽キャよ。私たちと違ってね。」


これで“そぞろ”って読むんだ。

あとナチュラルにディスらなかった!?


「上のが山霧(やまぎり) (おぼろ)よ。こっちもテンションは高いけど同族よ。安心して頂戴。」


この子もディスった!?


「逮捕されたって聞いたけど、うつろの名前は残ってるんだね。」

「ええ。彼女が真人間になって戻ってくることを願うばかりだわ。」


そこでハッとさせられた。

そうだ、めいろはうつろがクレイジーサイコメガネであることを望んでいないんだ。

私のことも普通に生きてほしいって。

そうだ、なんで今まで忘れてたんだろう!!


「ねえ、めいろ。私が死にたいってまだ言っていたら…怒る?」


静寂。それはここが図書館であるから、というわけではなくて。


「怒るわ。」

ああ、やっぱり彼女は…。


「友達だから。」



その言葉に私は


【ときめいた。】



「ただ驚きよ。半信半疑だったけれど本当に上書きされていないのね。」

その言葉が妙に引っかかる。


「上書きされた記憶は戻らない。」

「ええ、普通ならそう。うつろがあんたを殺した日、私もほとんどの肉を削がれたんだけれど。あいつは、あいつなら記憶を改竄してあなたを死しか望まない理想像に仕立て上げると思うの。」


「でもあなたは上書きされたであろう記憶を振り切って、てきろを、みくろを、部活のみんなを選ぼうとした。これは誤算だったでしょうね。」


私は上書きされた記憶に心当たりない。

めいろのことを消されていたのはなんとなくわかる。

ただ、少しにやけているめいろはどこか不気味で頽廃的だった。


「死を望むことも刷り込まされてたかも?」

「ありえるけど、彼女は原石を探していた。自ら死を望むダイヤを。加工石では限界があったと知っていたから。」


写真で一瞬見たクラスメイトと思しき肉の数々を思い出す。

なるほど、あれは実験の失敗結果だったわけだ。


あ、いつのまにかノートを使い果たしてしまった。

私は新しくノートを出そうとするめいろを止める。


「帰ろっか。」

何度見たかわからない。しかし見るたびに優雅だと思わせる夕日がそこにいた。


「ばいばい!!」

「ええ、また勉強会しましょうね。」


勉強なんて一ミリもしてないと思うけど、まあいっか。


そうして帰路を辿る私。


死活部も、そこにいたみんなも。

うつろも…なくなっちゃったんだな。


でも気がかりなのは…

[誰が新しく部活を作るように仕向けたのだろう?]


うつろが今の私じゃ理想にふさわしくないから、と殺したのは覚えている。


しかし、人材を配置する意味はない。

部活を新しくする道理はない。

うつろは勾留されているのにもかかわらず、人間関係があらたに構築されているのはおかしい。


それにめいろの記憶も消されていた。

うつろの記憶ではなかった。

なぜ?


なぜ家に妹がいるのだろう?

誰の差金?


ナゾを解くのはキライだあ。

考えるのをやめて、家にいる天使のために今日もカスタードの鯛焼きを買うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ