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第十一話 いつまでも待っているからね。

その後、宝石とか売ってる個店や芳醇な香り漂うパン屋を回る。

財布から紙幣が一枚、また一枚と飛んでゆく。


そして、ゲームセンターへ着いてしまった。

おお、金が溶ける。


「任せてくれたまえ、このてきろ、うさぎちゃんを取って見せようか!!」

ノーコンが続く。やっと掴んだ!!

現実はひ…、たまに上手くいくものだ!!


「どうぞ、むしろくん。」

「わあ!!」

なんの版権キャラでもない、ただの可愛さを張り付けただけのモブ。

どこか何者でもない自分と重なる。

てきろが取ってくれたプレゼント、一層光を帯びていた。


みくろはお菓子を乱獲していた。

袋がいっぱいになるほどに。


うつろはピッタリ押すやつに大敗しており、文句をぶつくさ言っていた


「結局買った方が早いじゃないか…」

「それ言ったらおしまいだろ?」


そしてプリクラ機へ。

御年120歳を超える大ベテランだ。

敬意を払おう。


「先私たちが撮るからむしろくんたちは待っていてくれ。」

「こいつとだからパパッと撮るわ。」

てきろ、みくろが機械の中へ入ってゆく。


(みんなで一緒に撮ればいいのに。)

でも、こういうのって普通だ、普通のJKだ。

私は心の底から安堵した。


隣のうつろが肩を叩く。

「ねえむしろちゃん。今日楽しかった?」

「もちろん!!誘ってくれてありがとうね!!」


「そっか。実を言うと、不安だったの。」

うつろは顔を背けた。


「なんで?テストも終わって絶好のタイミングだったよ。」

「私は、あなた以外とそんなに仲良くないから…。」


完璧超人のうつろでも不得意なことあるんだ。


「じゃあ今日でめっぽう仲良くなったね!!」


「ええそうね。…あなたの笑顔を見ていると、いろいろ考えていたこと全部晴れ渡っていくようね。」


「褒めてる…?」

「もちろん、あなたと一緒に来れてよかった。」


うつろの笑顔は萎れた朝顔のよう、疲れが取れていないのだろう。

しかし、いつもより日常を楽しんでいるように見えた。

彼女も普通のJKなのだ。


「私約束は守るよ、絶対に死ぬから。」

口が勝手に動いた。

彼女を元気づける言葉はこれしか知らない。


「ありがとっ!!」

うつろは向日葵だった。

その向けられた笑顔は、何事にも換えられない宝物。

私が今日を忘れることはないだろう。


「おーい、待たせたね〜。撮ろうじゃないか!!」

「ちょっと待ってて!!」


その日撮った二枚の写真、みんなとの集合写真に…

うつろとのツーショット。


***

「日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか。」

提案したのはうつろだ。

金もないし、その意見に賛成しようと思った。


「ちょっとてきろちゃんに話があるから。またね。」

あっさりと二人に手を振る。

バスに乗り込むまでうつろは頬を膨らませ、それをみくろがなだめていた。


バス停前のベンチに二人きり。

「で、てきろちゃん、話って…。」

私は頬に口付けされる。


「え!?なにっ!!??」

動転、驚天動地。

沸騰しそうな血液が身体中を巡り巡り、その熱は心にまで火を灯す。


てきろは粛々と近づいてくる。

目が合わせられない。近い、近いよてきろちゃん。


「今まで嘘をついていたんだ。」

私の赤面を無視する。


「本当は生きることが楽しいなんて思ったことなかった。」


「私はどこまでも卑怯で、人を信じられなくて…。この世が欺瞞で満ちている、そう疑って仕方がなかった。」


「実際嫌われていたしね。やれうざいだの、不幸になるだの。そんないわれのない誹謗中傷に、人の悪意に疲れてしまった…。」


「君だけだ。底なしの善意で私と関わってくれたのは。心の奥底でどう思っていたのかは知らないけれど、少なくとも見える範囲で気遣ってくれたじゃないか。」

私は何をいうべきだろうか。

「友達じゃん。それに昔の記憶はないけれど、一緒に部活を作った仲間だよ。」


彼女の顔には影が差し表情をよくみることはかなわなかった、しかし笑顔をこらえているように見えた。


「…ねえむしろくん。私と付き合ってくれないか?」


突然の告白だった。

もう夜になろうと空が決意した瞬間だった、そのときだった。


「私は…」

流れで行くべきか!?それとも、断るべきか…。

だって初めての恋人だって、その場合どっちが彼女で、どっちが彼氏なの!?


「か、考えさせてぇ。」

うーん顔から湯気が出ている。

しょうがないじゃん、ええっ意志薄弱じゃないよ!!

それにこんな流れで告白されるなんて思わないじゃん!!


「いいよ、いつまでも待っているからね。」

次のバスまでが待ち遠しい。

そうだ!!


「この前言ったカラオケ館あったじゃん、あそこでまた遊ぼうよ!!今度はみんなでさ!!」

気を落ち着かせるため別の話題を振る。


てきろは一瞬口をぽかんと開けたが、すぐに真剣な顔に戻ってしまった。

「…むしろちゃん、前言ったところはカラオケ館じゃなくて…大人の営みをする場所なんだ。」

落ち着いた表情でそういった。


それって、つまり。

「私、今、グループでそういうことを考えていた頭ピンク女ってことにならない!?」


「ふふっ。まあそうなるね。」

やらかした、完の璧にやらかしちゃったよ。


私は腹をくくった。

「明日さ、その…前の場所でさ…。告白の返事聞いてもらってもいいかな…。」


「ああ、ああ。いいとも。わ、わたしはいつも暇だからさ、アハハ…。」


バスが来た、ちょうどよく。

いつの間にか人が結構並んでいたことに気づかず顔を紅潮させるのだった。


***

「どちらが好みだろうか…。」

右手には赤、左手には黒。むしろくんの好みはどっちだろうか?


思えば、成り行きでラブ〇に行くだなんてハレンチすぎやしないかい!?

君って娘はぁ~。


私を誘ってくれたむしろくんも好きだったけど。

『私にはきみが必要だ。この手を取ってほしい。』


同じ孤独の輩として窓際に座っていた君を見ていた。

しかし、ある時からうつろくんと仲良くなり、男子とも話すようになっていった。


(置いていかないでくれ、私を。)

思えば身勝手な同族意識。

彼女はきっと自らを変えようと努力し、得た結果であると自分に言い聞かせた。


だから彼女に誘われたことがうれしかった、同時に自らを否定する要因にもなった。


気づけば彼女の真似をしていた。

姿勢正しく、心を強く、気配りを忘れずに。

大して目立つことはなかったが、話せる友人が増えた。


でも彼女は変わった。あの頃の彼女へと。

戻ったという表現のほうが正しいのだろうか。

一人佇む姿がなんともいどけなくて、放っておけなくて、でもどこか浮世離れしている君がいた。


君に勝ちたかったのかもしれない。勝手に競っていたのかもしれない。


純粋な君から目が離せなくて、いろんな幸福を知って…

昔の君より大好きになっていた。


すべて君のおかげだ。

学校が楽しくなったのも、生きることに幸福を感じたのも。


みくろやうつろ、〇〇〇とも仲良くなれた。


あれ、め〇〇って誰だっただろうか。



支度を終えて、夕暮れの道路を進んでいく。

むしろちゃんが決めた場所はラ〇ホから少し離れたコンビニ。


彼女はもう待っているだろうか。

路地を抜けて、彼女のもとへ───


「やっぱり、失敗だったかしら。」


胸が熱い、むしろくんから教えてもらった感情ではない。

痛みだ。


血を吐き出す。

痛い、熱い、痛い。

誰か助けてくれ。


必死に手を伸ばしてもコンビニまでは届かない。

意識が暗闇に落ちていく。


「むしろ…くん…。」

いやだ、死にたく…な……。


「あなたじゃふさわしくないから。」


7月13日、日曜日

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