8話
「迷惑か? 俺が薫の部屋に行くの」
「迷惑って訳じゃ……。でも、久しぶり過ぎで戸惑ってるというか……」
本当に何年ぶりだろう? そもそも、こんなに長く会話したのだって中学1年生以降は無かった。
部屋に来るのなんて、4年ぶりじゃないかな?
「じゃあ、10分後ぐらいに行く」
「……10分後?」
「ああ。……その間に顔を洗って、整えておけよ」
そう言い残して、伶桜は部屋に入り扉を閉めた。
ふと自分の顔を触ってみると――顎まで濡れていた。
これは、涙?……そうか、僕はそんなに泣いていたのか。
伶桜は僕の顔も見ずに会話しただけでそれを見抜いて、整える時間をくれたんだろうな。
「……本当、なんでそんなにクールで格好良いのさ。……ズルいよ」
僕も自然とそんな気遣いが出来るような、格好良い男になりたかった。
やっぱり伶桜に接すると、自分のダメさ加減に心が折れそうになるなぁ。
僕は急いで洗面所に戻って顔を洗い、冷蔵していたベイクドチーズケーキを切り分ける。
そうしてキッチリ10分後、伶桜が僕の部屋へとやって来た。
「……マジで久しぶりだな、この部屋も。懐かしい」
「そう、だね……」
中央に四角いテーブル。
ベランダへと続く窓際には何もない。
伶桜の部屋の壁と接するようにベッド。
勉強机と本棚が他の壁際に設置されている。
あとはクローゼットと床に散らばる筋トレ用具ぐらい。
特に模様替えもしていないから、最後に伶桜が来た時と家具の配置も変わって無いはずだ。
テーブルを前に立つ伶桜の横顔を、僕はマジマジと見つめる。
常人離れした、端正な顔立ちだよなぁ……。
シミ1つ無い透明感のある肌。
キリッとした奥二重に、クールで切れ長の涼しい目元。
高い鼻に、知的さを感じさせる逆三角形な顔の輪郭。
長い手足に、スレンダーなボディスタイル。
その美しさを更に際立たせているのは、髪型だ。耳より後ろは短く、前髪と横髪は長め。
これが色気あるハンサムさを醸し出している。
最後にちゃんと顔を合わせた中1の頃より、よっぽど洗練された格好良さだ。
成る程、これは女の子にも告白されま来るはずだよ。
学生服か、今みたいに適当でラフなパーカー姿しか見た事がないけど……オシャレをすればもっとモテると思う。
僕が望む格好良い素材を全て持っているのに、勿体ないな……。
それに、こうして近づいて思ったけど……。
「伶桜」
「なんだ?」
「……また身長、伸びた?」
僕の質問に、伶桜は少し顔を顰める。
「それ、いつと比べてだ?」
「中1から。あの頃は170センチメートルぐらいだったよね」
「……まぁ、それよりは少しだけな」
「……今、身長いくつ?」
少しだけ瞳を揺らしてから、伶桜は囁くように言葉を紡ぐ。
「……174か5センチーメトルぐらい」
は? 日本人の女性平均身長が158センチメートルぐらいだから、16センチメートル以上も平均より高いって事? 男性平均だって172センチーメートル有るか無いかなのに。
というか、僕よりも15センチメートルぐらい身長高いの?
「ズルい」
「そんな事言われてもよぉ。……俺だって、好きで身長が伸びた訳じゃないんだよ。まぁバスケしてると有利な時もあるけど」
困ったように頭を掻く仕草すら、クールで格好良いんですけど。……なんなの、コイツ。
幼馴染みだけど、凄く腹が立つ。
苦手意識が更に増すんだけど。……泣いている僕を励ます為に来てくれたのかと思ったけど、もしかして止めを刺しに来たの? 鬼なのかな? ……涙でメガネのレンズが曇れば良いのに。
このハンサム、僕には目に毒だ。
「足の骨、僕に継ぎ足してよ」
「グロい事を言うな。……おい、マジな目をするの止めろ」
「マジだよ」
おろし金で擦って身長縮めてあげようか?
調理器具なら、無駄に整ってるよ?
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