4話
慰めてくれてるんだろうな。
可愛いを練り固めたような山吹さんに、僕のように陰気な男の気持ちが本当に理解出来る訳がない。
本郷とかも好意があるみたく言っていたけど、学校で山吹さんはアイドルのようにモテてるじゃん。
皆から可愛いって認めてもらえてるのに、認められない僕へ話を合わせてくれてるのか。
優しい人なんだな。
「僕が誰にも認めてもらえないのも当然なんだけどね。……僕自身だって、自分が嫌いなんだし」
「誰も認めてくれないならさ、せめて自分だけは自分を認めて好きになってあげなきゃ」
太陽のような笑顔が眩しい。
髪で視界が覆われていて、良く見えないのが幸いした。
直視していたら心まで焼き尽くされそうな輝きだ。
「自分を認めてあげられないなら、認められるように優しくしてあげるとか……。思い切って環境とか考え方をガラッと変えるのも有りかもね!」
考え方を、か……。それが出来たら、良いよね。口で言うのは簡単だけど……。
劣等感で捻くれた僕の性根は、そう簡単に変わるとは思えない。
環境って言っても、高校デビューにも失敗してるし。
そもそも人と関わらないのが正解なんだと思う。
嬉しい出来事も少ないかもしれないけど、傷つく機会も同時に減るから。
折角心配してアドバイスをしてくれる山吹さんに、そんな後ろ向きな事は言えないけどさ……。
「その……。僕そろそろ帰らないと、バイトに遅れちゃうから」
結局、僕はこの場から逃げる選択をした。
バイトに遅れそうなのは本当だけど……。
それより、気持ちが耐えられなかった。
考えれば考える程、素直にアドバイスを受け取り前向きになれない自分が嫌いになる。
「あっ、そっかぁ。残念」
社交辞令ってやつかな。……いや、ランニングをサボれる時間が終わったから残念なのかもしれない。
「色々とありがとう。……でもあんまり、僕には話しかけない方が良いと思うよ。僕と一緒にいるのを快く思わない人も、きっと居ると思うしさ」
本郷とか本郷とか、後はその取り巻きとか本郷とか。
「心配してくれてるの?」
うん、僕の身の安全をね? 嬉しそうな顔をしないで、弾けるような笑顔を向けないで。
女の子に免疫がない僕がそんな顔を向けられると、勘違いしちゃうよ?……好意を持ってくれてるのかなってさ。
「じゃあ、私も部活に戻るね! バイト、頑張ってね~」
山吹さんが走り去る背を眺め、僕は早足でバイト先へと向かう。
人って不思議だな……。不釣り合いだと分かっていても、好意を向けてくれているのかなって思えば、自分も好意を持ってしまう。
中学からずっと1人ぼっちだった僕にはさ……。
これが恋なのか、それとも違う感情なのかなんて、判別が出来ないよ――。
バイトを終えて自宅マンションへと帰り、自室へと荷物を置く。
換気をしようと窓を開け、少しだけ夜空を眺め黄昏れていると――カララという音が聞こえた。
ベランダにある『非常時にはここを破って避難してください』と書かれた蹴破り戸越しにだ。
「……そっか。伶桜も帰って来たんだな」
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