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メイクアップ! 見知らぬ幼馴染との逆転関係  作者: 長久
1章 嫌いな自分たちに、好きな自分たち
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3話

「美園、知り合い?」




「うん、ちょっとお話したいから、先に行ってて?」




 僕には山吹さんとお話する事なんてありません。……陰で憧れたり、可愛いなぁと思っているだけで……。僕はそれで十分ですから。お友達も、お願いだから連れて行って! ランニングの途中なんだしさ。




「え~サボり?」




「ちょっとだから、許して!」




「仕方ないなぁ。許してしんぜよう」




 許さないでよ。おかしいでしょ? もうちょっと真面目に部活をやりなよ? 




 山吹さんたちはバドミントン部だから、外で練習している今日は体育館を別の部活が使う日なのかもしれない。


 それこそ、伶桜の入っているバスケ部とかが……。


 外で基礎練習をする日は、あんまり面白くないと話しているのを耳にした事がある。




 だからかな、こんな適当にサボりを許すのは? 弱い僕が言える事じゃないけどさ、基礎も大切にしてよ……。




 俯かせていた顔を怖々上げると、山吹さんの友達が既に遠くへ走って行く背が見えた。




「蓮田くん、今帰りなの? 部活入ってないのに、遅めだね?」




「え、う……うん。ちょっと、色々あって」




 ヒョコッと覗き込んで来る花崎さんと一瞬目が合った。


 


 150センチメートルあるか無いかと小柄なのに、スタイルが良く見えるのは凄い。羨ましい。


 あ……思わず見惚れて、ジロジロと全身を見ちゃってた。


 僕の視線で不快な気持ちになっていないか気になり、チラッと山吹さんの顔を確認する。




「……なんかさ、蓮田くん。もしかして、元気無い?」




 山吹さんは心配そうな表情を僕に向けていた。




 リスのように愛来るしい顔、白い肌の上を汗が滑り落ちていく。


 それがとても可愛くて……。


 僕は目を逸らしてしまう。


 愛くるし過ぎて、僕には眩しい。




「べ、別に……そんな事は無いよ?」




「ふ~ん、そう?」




「そ、そうだよ?」




「……ね、あっちのベンチに座って、ちょっと話そうよ?」




「え、ええ? いや、良いよ!」




「良いから、私のサボりに付き合ってよ」




「いや、サボるのは良くないんじゃない?」




「体育館を使える日に備えて、今日は体力を温存してるの! ……それにね?」 




 ピッと、僕の顔の口の前へ白魚のような指を1本突き立てて来た。……人との距離感、ぶっ壊れてない? 人の唇の前に指を突き出すとか、山吹さんはレベルが高すぎだよ。




「私ね、人の顔色にはちょっと敏感なんだよ? 嘘吐いても無駄。悲しがっているのは伝わるからね」




 残暑の強い陽射しが肌を焼く中、涼風が校庭の土煙りと一緒に、ほんわりと柔らかな香りを運んで僕の鼻孔をくすぐる。




 それは山吹さんの流す爽やかな汗が原因だと理解して、思わずまた顔を俯かせてしまった。




 恥ずかしい……。でも、気のせいだろうか? 俯く直前に見えた彼女の表情が、少し儚げに映ったのは……。




「ほら、行こう?」




「……は、はい」




 断れない。誰からも気に留められない僕如きが断るなんて、烏滸おこがましい。




 ベンチで山吹さんと話をしているなんて風聞が広がれば、本郷たちだけでなく、もっと多くの人からイジメられるかもしれない。――でも、そんな事は今更だ。




 どうせ誰からも話しかけられないし、人が集まる限り弱者への迫害は世から消えない。




 それなら、僕に唯一話しかけてくれる山吹さんと仲良くした結果イジメられるのは本望だ。


 僕自身が、もっと山吹さんと話をして、自分の抱いている気持ちをハッキリさせたいというのもあるけど。




「なんで敬語なの? 同じクラスの同級生でしょ?」




 クスクスと笑う山吹さんは、やっぱり溌剌としている。


 さっき、ほんの少し寂しそうに見えたのは僕の気のせいだったんだろうな。


 長い前髪のせいで、視界も狭いし。きっとメガネが曇ってたんだろうな。




 言われるがまま僕は山吹さんに案内されて中庭のベンチへと座る。


 極力、彼女から離れて。


 思わず背筋がピンっと伸びてしまう辺り、僕には男性らしい度胸がやっぱり足らない……。


 もっと男らしくドカッと座れるような強いメンタルになりたかったなぁ。




「それで、どうしたの?」




「いや、本当に何も……」




「嘘吐かなくて良いってば。……目の前で話すより、視界の横に座ってれば話しやすいでしょ? 良かったら、相談してよ」




 山吹さんは本当に人の気持ちに敏感なんだな。


 確かに、その通りかも知れない。


 目の前に立たれると、僕と同じ小柄な山吹さんでも威圧感を覚えて凄く居心地が悪かった。


 横に座っている今の状態だと視界に入らないから、幾分か楽だ。


 それでも、僕からすればもの凄く緊張するんだけどね……。




 だって山吹さんは――入学式から1人ぼっちだった僕に話しかけてくれる唯一の人で……。


 僕が一目惚れしちゃっているのかもしれない、憧れの存在なんだから。




 でも告白する勇気も自信もないし……。


 本郷たちにイジメられて悲観的になってましたなんて、情けない事をそのまま伝えたくもない。




「……ちょっと、自分が情けないなって自己嫌悪してただけだよ」




「そっか。……その気持ち、ちょっと分かるなぁ。自分が許せない、人から認めてもらえないとかって、辛いよね」

本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


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