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メイクアップ! 見知らぬ幼馴染との逆転関係  作者: 長久
2章 いざ、メイクアップ!
19/64

19話

「違う、最高だ」


「本郷たちに金取られるよりキツいんだけど」


「そうか。でも最高の気分だ」


 僕は最低の気分だよ。

 興奮したように顔を覆うな。

 腹が立つ。


「……これ、ゴスロリってやつ?」


「違う。ゴシック&ロリータは、ゴシック調のゴージャスさと退廃美、それにロリータの甘みが特徴的だ。共通点は多いが、これはもう少しカジュアルで敷居が低い、地雷系ってジャンルだ」


 うん、僕には違いが分からないね。

 地雷系って何? FPSの武器かな?


 鏡に映る自分を見て――怖気がする。

 確かに我ながら可愛いなぁとは思うけど……。

 スカートは慣れない。

 スースーとする。


 肩が出た白い萌え袖のブラウス、チェーンの着いたネクタイ。

 なぜか3本もついたベルト付き膝丈スカート。黒い靴下に、厚底の黒い靴。


 なんか……動画サイトでこんな服装をした娘がホストに通っているのを視聴した事がある。

 あの動画の人はピンクのバックとかも持っていたから、それよりはマシだけどさ……。

 女装初心者に、いきなりパンチが強すぎない?


「店員さん。これ、着て帰れますか?」


「大丈夫ですよ、じゃあ値札取りますね」


「ちょっ!? 伶桜!?」 


 これを着て街を歩けと!?

 貴様、鬼なのか!?


「さっきまでのヨレヨレの服より、少なく見積もって百億倍は良い。よし、次行くぞ」


「まっ、待って! お会計して来るから!」


 慌ててお会計に向かう。

 それなりの値段は覚悟していたけど……。

 意外にも1万5千円ぐらいだった。

 靴もあると考えると、メンズ物よりはかなり安い。とは言え、美容室代金に直ぐ無くなりそうな量の化粧品、服1セットだけで、もう2万1千円の出費だ。


 多分、化粧品のランニングコストもエグいし……オシャレって、お金かかるね。

 僕は今日だけで、何時間分のバイト代金を失うんだろう……。


 結局その後、伶桜は恍惚とした表情で僕を着せ替え人形にして、全く系統の違う3種類の服を一式買わされた。

 本日の支出――7万円弱。

 ATMから取り出したお金が直ぐに消えて、泣きそうです。


 でも伶桜がコーディネートしてくれたお陰かな? 

 この街に来た時のように、ヒソヒソと陰口を言われている様子は消えた。

 女装をする事で悪口を言われなくなるのは複雑な気分だけど……。

 自分の存在が認められたようで、少し……いや、かなり嬉しかった。


 次は僕が伶桜を着せ替え人形にする番。――伶桜、覚悟しておけよ?


「――あぁ……。格好良い、ヤバい! ね、ね! 次はこっち!」


「……分かったよ」


 伶桜は今、試着室で僕の着せ替え人形となってもらっている。

 メンズ服にしては安く、色んなジャンルの服が置いてあるお店で、一店で色々と試せるのはたまらない。


 黒のワイドパンツに白タンクトップ、オーバーサイズの白シャツ。

 このゆったりとしつつも爽やかなコーデも、格好良い!


 でも長袖ワイシャツを7分丈ぐらいに捲って腕時計を強調しつつ、働き易い感じを演出した服装も良かった……。

 ああ、こんな格好良い男になりたかったぁ~……。


「なぁ……。散々、俺も玩具にしたけどよ。そろそろ決めようぜ?」


「あ、そうだね」


 自分の好きな買い物をしている時間は一瞬だけど、興味が無い買い物に付き合う時は長く感じる。

 それに着替えを何度もするから、疲れるよね。


「じゃあ、今着ているのはそのままね。こっちも全部購入で!」


「……は? メンズ服は値段が高いだろう? む、無理だぞ?」


「大丈夫。ここにあるのは安いから。2セットでも、4万円しか行かないよ」


「十分にヤベェ金額だよ……」


 心なしか、伶桜の唇が震えている。


「後、腕時計と本命の服が1つあるから……多分、もう5万円は飛ぶよ?」


「……マジ?」


「マジ」


「秋口までの服を3セットと時計だけで、合計9万円?」


 あ、間違いない。

 唇が青くなってきてる。


「……だから僕が出すって言ったのに」


「男物がこんなに金かかるなら、先に言ってくれよ。俺は部活ばっかで、バイトが出来ねぇんだぞ……」


 遠い目をしながら、伶桜はゲンナリとした表情を浮かべている。


 高校生のお小遣いだとキツいよねぇ。

 多分、こういうのって一気にまとめ買いするんじゃなくて、徐々に着回しながら揃えて行くものだと思うし。


 今回はコンテストの事があるから、一気に全身トータル買いしたけどさ。


「じゃあ、やっぱり僕がお金出す?」


「……いいよ。その代わり、本番のミスコンで絶対に逃げるなよ?」


 伶桜は若干、自棄になったように店員さんへ声をかけ、会計に向かった。


「……文化祭のコンテスト、忘れてた」


 伶桜を格好良く、自分がこれを着れたらという欲を満たしていて……頭から飛んでいた。


 そうだ。

 僕は自分が通う高校の文化祭で、今着ているようなフリフリの服を着てステージに立たないといけないのか……。


 せめてものお願いだから、今のように短めのスカートは止めて欲しい。


 その後、僕の本命とするお店に伶桜を連れて行くと――苦笑しながらも受け入れてくれた。

 値段を見て顔が引き攣っていたけどね。


 そうして楽しかった時間も終わり、僕たちは電車で地元の駅まで戻って来た。


「俺の着るメンズ服は薫の部屋で保管。薫が着る服は、俺の部屋で保管するぞ」


「……うん。そうだね、親にバレた時、その方が良いからね」


「ああ。叔母さんも考え方が古いけど……。特に、うちの父親にバレたら終わりだな。どっちも男装なんて絶対に認めねぇだろうからさ」


「分かってる。子供の頃から、長く一緒に居るんだしね。……叔父さん、怖いよね」


 警察官、絵に描いたように厳格なお父さん。

 子供の頃、イタズラして怒られた時は体の芯から震えたなぁ。


「ああ。……母さんは大人しいけどな。父さんは……な。尊敬はしているけど、近づくのも怖いよ」


 伶桜の手が小刻みに震えている。

 別に虐待とかは無い。

 それどころか、伶桜の叔父さんは教育熱心だ。……常に正しくピシッとしていて、厳しいけど。


 近所に住むだけの僕でもそう感じるんだから、育てられて来た伶桜の恐怖は僕の比じゃないだろうな。

 小さい頃は「怖すぎる」と伶桜は泣いていたし、魂レベルで恐怖を刷り込まれてる可能性もある。


「……じゃあ、駅のトイレで行く前の服装に着替えて来ようぜ」


 そう言い残し、伶桜は女子トイレへと向かう。

 そして僕は男子トイレへ。

 個室にサッと入り、元のヨレヨレの服へと着替える。

 個室に入るまでの、周囲が驚愕している表情には焦った。……胸がドキドキして、嫌な汗が噴き出る。


本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ

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