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メイクアップ! 見知らぬ幼馴染との逆転関係  作者: 長久
2章 いざ、メイクアップ!
18/64

18話

「まずはそのモッサイ頭からだ。美容室を予約してあるから」


「……美容室、怖い。一緒に来てくれる?」


「女装した薫にそう言われるなら兎も角、今のモッサイ薫に言われると――キモいな」


 嫌そうな顔をした伶桜に若干傷つく。

 発言がキモイって事なんだろうけど……。

 やっぱりビクッてなる。キモイ、ウザいは僕の思春期で多大な傷を付けて来たトラウマのワードなんだよ……。

 だから顔を見せないように大きなマスクだってしているのにさ……。


 少し落ちこみながら薫の後ろをついて歩く。

 美容室の一際オシャレな店構えに僕は気圧されていた。


 床屋さんみたいに入りやすい店構えにして欲しい……。

 需要と供給の違いってやつなのかなぁ?


 伶桜は平然と店内へと入る。

 こんな場所に取り残されるよりはと早足で着いて行く。


 もうね、見るからにオシャレな店員さんだらけで……。

 僕は喋れません。


「今日はどうしましょうか?」


「え、えっと……。髪を切ってください」


「どんな感じに切りましょうか?」


 ど、どんな感じに⁉︎

 ナニ、ソレ⁉︎


「その、良い感じに……」


「…………」


「…………」


 美容師さんが若干困ってるのか、瞳を揺らして苦笑している。

 

 なんで? 僕おかしな事を言った!? ここは髪を切る場所なんでしょ? 専門家が良い感じに切ってくれるんじゃないの!?


「……俺がオーダーして良いですか? 顔の形が丸いし、コイツは小顔効果狙えるウルフカットが似合うと思うんですよ。放置してたから、髪の長さも足りてるし」


「そうですね、イケると思いますよ」


「メンズの短めなウルフカットじゃなくて、レディースの長めウルフでお願いしたいんです。高校生だから染められないですけど、インナーカラーでシルバースプレーとかもしたくて」


「良いですね。それなら、外ハネとかウェーブがあるとインナーが映えそうですね」


 店員さんと伶桜は、楽しそうに喋りながら僕の髪をベタベタと触ってくる。

 僕はマネキンです。喋りません。


「あ、取り敢えず今回はパーマ無しで。色んなスタイル出来るか試しの段階なんですよ。髪質的に、ブロウで外ハネ作れそうですか?」


「イケると思いますよ。少しだけ癖がありますから。足りないところは、アイロンですかね」


「分かりました。それじゃあ、それでお願いします」


「了解です。危ないんで、メガネお預かりします。それじゃあ、カットしていきますね~」


 当人を置いて進められた会話だけど――日本語でお願いします。


 ウルフとかアイロンとか……。

 何それ、僕のしってる限りだと狼と服の皺を無くす道具しか想起されないんですが。

 格好良い服装やバイク、車や時計に偏っていた知識の弊害が、こんな所で……。


 そうして30分ぐらい経過したかな。「メガネを返してください」と言う勇気も無く、ぼやけた視界でガンガンぶつかりながら洗髪してもらい、席に戻りドライヤーで髪を乾かしてもらった。


 そうして「最後の調整しますね」と軽くチョキチョキされた後――。


「――では、ご確認をお願いします」 


 メガネを渡され、鏡を見る。

 もう、ビックリしたよ。……誰? 

 いや、ウィッグを被った時にも言ったけどさ……。

 今回は自前の髪だから、余計に違和感がある。


 モッサリとして目が隠れている男は、もう何処にも居ない。

 スッキリとオシャレに整えられた僕が――そこには映っている。


 怖ず怖ずと触ってみる。

 襟足と、もみあげの辺りは長い。

 もみあげは僕の丸い顔を隠すように伸びていて……。

 でも前髪や他の部分は短め……。

 うん、別人だ。


「どうでしょう? バッサリ行きましたけど、切り足りない所はありますか?」


「い、いえ! 大丈夫です!」


 こうやって確認されても、「ここをもうちょい~」なんて言える訳がない。

 それに専門家が良いと思いながら切ったなら、これが良いんだろう。


 伶桜も座っていたソファーから立ち上がり、満足気に僕を見ているしね。


 お会計が6千円。

 普段、髪を切っている金額の約6倍だったのには腰を抜かしそうになったけど……。

 まぁ仕方がない。


「――よし、髪は整った。次は化粧品だ。……正直、これは俺もよく分からない。販売員に予算を伝えて一式整えてもらおう。ネットで見る限り、一式揃えるなら相場は……1万ぐらいか。まぁ安ければ5千円からイケるらしい」


「はい……」


 化粧品販売店とか、美容室以上に分からない。全て任せます。


 2人してキョロキョロと辺りを見廻しながら店内に入り、販売員のお姉さんに全てを委ねた。

 予算範囲を伝え、肌質的には~とか色々と語りつつ、テスターを使い化粧の仕方もレクチャーしてくれた。


 覚えようと頑張っては見たけど……。

 頭がパンクして、半分も記憶に残らない。

 伶桜は真剣に聞きながら、動画を撮っていたから、今後もなんとかなるとは思うけど……。


 日本語って案外、日本で使われてないんだね。

 英語とかの専門用語ばっかりで、意味が分からなかったよ。

 後で調べなきゃ。


「――もうマスクはするな。コンタクトも買うぞ」


 化粧が終わった後、伶桜は僕にそんな事を命令して来た。

 目の輝きが、メンズ服を見ていた時と全然違う。……って言うか、髪切って化粧が終わるまでと、全然違う。


 伶桜って、あからさまだよね。

 男の僕には興味が無いけど、自分の理想とする可愛い子に近づく程に昂ぶって目に熱が籠もる。


 そのままコンタクトも買って、次は遂に服だ。

 それで伶桜の考える僕は完成。

 ここを耐えれば、次は僕が伶桜を着せ替え人形に出来る。

 一体、伶桜は僕にどんな服を着せたいんだろう?


 そう思ってから数十分後――。


「……ねぇ、これは僕へのイジメだよね?」 


 僕は伶桜と契約を交わした事を――心から後悔した。

本作をお読みいただきありがとうございます┏○ペコッ


この物語に少しでもご興味を持って頂けたら……どうか!


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また、ブックマークなどもしていただけますと読んで下さる方がいるんだと創作意欲にも繋がります。


どうか、応援とご協力お願いします┏○ペコッ

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